ウイルス疾患への予防接種に「睡眠」が超重要な理由

現在世界中で最重要課題となっているコロナ(COVID-19)ワクチン。
高齢者接種が一段落し、次は若い世代への接種も始まりつつあります。
コロナワクチンについて色々な情報が出てきていますが、ウイルス疾患に対する予防接種で抗体を効果的に獲得するために、「睡眠」がとても重要だとご存知ですか?

睡眠が風邪の引きやすさに影響する

健康に睡眠が非常に重要であるのはほとんどの人が知っていると思います。
疲労回復のため、メンタルヘルスへの影響、脳機能の維持のため、さまざまな効果が知られています。
その他、免疫機能にも大きな影響を与えているのです。
ある研究では、睡眠時間が6時間未満の人は、睡眠時間が7時間以上の人にくらべると風邪を約4倍引きやすいと報告されています※1。
また別の研究では、「寝付けない、途中覚醒がある」などの睡眠の質の問題がある人は、ぐっすり眠れる人にくらべて5.5倍風邪をひきやすいと報告されています※2。

睡眠時間はウイルス疾患に対する予防接種の免疫反応に影響を与える

予防接種と睡眠の関係についてのコメント論文を紹介します※3。
インフルエンザワクチンの研究では、インフルエンザウイルスへの抗体価が睡眠時間の短い群では長い群にくらべて半分になっていました。
また、B型肝炎やA型肝炎ワクチンに関する研究でも、抗体産生や免疫細胞に差異が見られたと報告されました。
そのほかの研究でも、免疫反応をサポートするサイトカインの活性に差があったと報告されています。
このようにさまざまな免疫の働きに睡眠の長さが影響していることが示されています。
ただし、これらの研究では「睡眠の質」との検討はなされておらず、加えて今回のCOVID-19ワクチンに関しては睡眠との関係を検討できていません。

予防接種を受けた夜は7時間以上は寝ましょう

以上のように、これまでの先行研究から、風邪の引きやすさや予防接種後の抗体産生と睡眠時間には関係性があることがわかりました。
特にワクチン接種当日はしっかりと睡眠時間を確保することをお勧めします。
接種後の接種部位の痛み・発熱等の副反応も予想されますので、体力を維持するためにもしっかりと睡眠を取りましょう。
接種当日の予定を立てて、就寝時間を事前に決めておくことが大切です。
十分な睡眠時間を確保することが難しい人が多いと思いますが、普段から、コロナ感染予防のため、また、ワクチン接種日はワクチンの効果を高めるためにしっかりと睡眠を取りましょう。

<参考>
※1 Aric A. Prather et al「Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold」(Sleep. 2015 Sep 1; 38(9)353–1359)
※2 Sheldon Cohen et al「Sleep habits and susceptibility to the common cold」(Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1)62-7)
※3 Christian Benedict et al「Could a good night’s sleep improve COVID-19 vaccine efficacy?」(The Lancet Respiratory medicine. COMMENT| VOLUME 9, ISSUE 5, P447-448, MAY 01, 2021)

 

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南 未来株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

学生時代より予防医療やメンタルヘルス支援に興味を持ち、大学院で産業保健(Presenteeism)の研究をしました。大企業での産業保健師を経て、海外にて専業主婦、行政保健師、中企業の保健師も経験してきました。保健師として、会社組織や個人が自立して健康を構築していけるように、エンパワメントの視点を忘れずに支援していきたいと思います。また、女性として、親として、妻として、ワークライフバランスやダイバーシティについても発信していきたいです。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、精神保健福祉士、両立支援コーディネーター
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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