フェイスシールド・マウスシールドは予防効果がある? 12月15日更新版「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第4版」

フェイスシールド・マウスシールドは予防効果がある? 12月15日更新版「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第4版」

日々感染者数が最多を更新されており、まだまだ第3波流行は収まる気配はありません。
2020年12月15日、日本産業衛生学会と日本渡航医学会が共同発出している「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」が更新されました。
今回も、「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の更新内容をわかりやすく説明いたします。

前回の更新内容は以下の記事を参照ください。

使用の普及に伴い注意喚起を強化するため、「フェイスシールド・マウスシールドに関する説明」を追加

街を歩いていると、不織布マスクだけでなく、布マスクやウレタン素材のマスクを使用している人を見かけますが、最近では「フェイスシールド」や「マウスシールド」を使っているも増えてきました。
感染対策をしながら食事ができる、口元が見えるため接客や手話通訳の際に使用できるなど、さまざまなメリットが聞かれます。
しかし一方で、感染予防策として万全なものなのかという疑問もあります。
そこで、今回の更新では、マスク等の着用時の注意として、フェイスシールド・マウスシールドの適切な使用方法について以下のように追記しています。

フェイスシールド・マウスシールドの適切な使用
・ フェイスシールドの使用目的は、飛沫による眼粘膜からの感染を防止することである。フェイスシールドの単独使用では、吐き出しおよび吸い込み飛沫量を防ぐ効果はほとんど期待できない。そのため、感染予防の目的でフェイスシールドを使用する場合は、必ずマスクを併用すること。
・ マウスシールドも吐き出しおよび吸い込み飛沫量を防ぐ効果は期待できないので、感染予防の目的でマウスシールドを使用してはならない
・ 口元の動きを見せる等の目的(手話など)でフェイスシールドやマウスシールド使用する場合は、適切なフィジカルディスタンシングを確保し感染を予防する。
出所:「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」第4版(修正済)

換気の重要性が高まったことを受け、「環境対策に換気に関する情報」を追加

以前から新型コロナウイルスは冬に増加すると言われていましたが、実際に冬場になり新型コロナウイルスの第3波が訪れました。
感染予防対策として3密を避けるため「換気」も重要ではあるものの、一段と寒さが厳しくなる中で、寒さを防ぎつつ換気を行うことは至難の業です。
また、冷たい空気では湿度も低くなるため、乾燥した空間でウイルスが広がりやすくなり、人にかかる飛沫量も多くなってしまいます。

今回の更新では、職域のおける対策の環境対策として「事業所における換気」という項目が追加されました。
冬場において、寒さを防ぎつつ、3密を回避するための十分な換気を行う方法や、換気の目安、適切な湿度がまとめられています。
クラスター発生予防のためにも、大切な事項となります。

事業所における換気
冬場においては寒さを防ぎつつ、室内のこまめな換気を行うことが重要である。推奨される換気方法としては、(1)窓の開放による方法、(2)機械換気(空調・機械換気整備)による方法との2つに大別される。いずれの場合も適切な湿度(40%以上)の維持に留意すること。換気の目安として、室内の二酸化炭素濃度を測定し1000ppmを超えていないかを確認する用いる方法もある。
(1) 窓の開放による方法
・ 居室の温度や湿度を適切に維持しながら、窓を開けたうえで自然換気が有効である。換気の回数は30分に1回以上、数分程度窓を全開にすることが望ましい。空気の流れを作るため(複数の窓がある場合は)二方向の壁の窓を開放する。窓が一つの場合はドアを開けておくこと。
(2) 機械換気による方法
・ 空気環境の基準および必要換気量(一人当たり毎時30㎥)が確保できているか確認すること。必要換気量が満たされていない場合には、換気設備の清掃や整備等を適切に行うこと。
・ エアコンの換気量は常に一定とし、従業員が無断で流量の調整をしないように注意喚起をする。
・ 必要換気量を満たしているか確認するためには、日本産業衛生学会(産業衛生技術部会)が無償で提供している換気シミュレーターを利用することができる。出所:「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」第4版(修正済)

 発熱や風邪症状の体調不良者への対応・職場復帰の目安が変更

今までの「職域ための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」では、「発熱や風邪症状を認める者の職場復帰の目安」が提示されていましたが、発熱等の症状をほとんど呈さない新型コロナウイルス陽性例も多く報告されていることを背景に、「発熱や風邪症状を認める者の」から「発熱や風邪症状の体調不良者」へ変更になり、発熱や風邪症状が消失した後の初期対応や職場復帰の目安についても記載がされました。
「産業保健新聞」を運営しているドクタートラストでは、「体調不良者を休ませた場合、いつ職場に復帰をさせたらよいか」というご相談を多くいただきます。
今回の更新では、会社として休業が難しい場合の職場復帰方法や、就業時間途中での職場復帰を可能とするため、症状軽快後「3日」の休業ではなく、「72時間」とするなどの変更がありました。

もうひとつ、この項目の更新で注目するのは、体調不良者だけでなく、感染者した場合での職場復帰の目安の条件が、解熱後に少なくとも72時間が経過しており「発熱以外の症状(咳・倦怠感・呼吸苦)が改善傾向である」に変更になっている点です。
以前は「すべての症状が消失するまで」が職場復帰の目安となっていました。
しかし季節性の風邪や花粉症などのアレルギー症状などの可能性、また新型コロナウイルスは感染後に後遺症が発生すると言われている点を鑑みて、より柔軟に対応できるように変更されたと考えられます。
職場でのクラスター発生予防のためには、基本的な感染予防対策を継続、および見直しが必要です。
「新型コロナウイルス感染症に関する対策ガイド」の今回の更新は、最新の知見や情報を組み込まれていますので、ぜひ参考にしてください。

<参考>
一般社団法人日本渡航医学会、公益社団法人 日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第4版(修正済)」

 

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原田 佑紀子株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学病院やクリニックで看護師として、さまざまな疾患をもつ働き盛りの年代の患者様を間近で看護させていただくなかで、からだとこころは密接に関係している、と強く実感しました。
「病気」に目を向けるだけではなく、病気になることで揺れ動くこころや生活を支え、健康に働くことをサポートする役割になりたいという思いから、産業保健師として活動しています。皆さんの「知りたい」最新の産業保健の情報を伝えられたらと思います!
【保有資格】看護師、保健師、人間ドック健診情報管理指導士、睡眠健康指導士上級
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