2018年10月22日に開催された政府の未来投資会議では、継続雇用年数を65歳から70歳に引き上げるという方向性が示されました。
今後は従業員が希望すれば70歳まで働くことができる環境作りが企業の責務となり得る、ということです。
この大きな舵取りの背景には、今まさに起こりつつある深刻な人材不足問題があります。
人手不足倒産件数の増加 2018年はすでに76件
「「人手不足倒産」の動向調査(2018 年度上半期)」(帝国データバンク)によれば、人手不足を理由とする倒産の件数は2013年には年間45件だったものの、年々増加し2017年には年間114件に達しています。
そして2018年度上半期(4-9月)はすでに76件が報告されており、昨年の同時期と比較しても増加傾向となっています。
人手が足りない……生産年齢人口の減少
景気が回復して取引・業務量は増えているものの、募集を出す、あるいは紹介を希望しても人が来ない、定年等で人が退職し結果的に営業が立ち行かず、倒産に追い込まれるという状況が実際に起こっています。
その背景には生産年齢人口の減少があります。
生産年齢人口とは15歳から64歳までの人口を指し、1995年には8,726万人だったものの、2015年には7,728万人と、20年間で約1,000万人の減少となっています。
このまま減少傾向が続けば、2050年頃にはさらに2,000万人の減少が見込まれています。
昨年の3月に中小企業基盤整備機構が行った調査によれば、調査に協力した中小企業約1000社のうち73,7%が、人手不足を感じると回答しています。
人材確保の競争激化
このように今後長期的な人材不足が予測されることから、人材のヘッドハンティングを行う企業には中間・若手の紹介の依頼が殺到しているといいます。
現在は人手が足りている業界であっても、将来的にはより積極的な採用活動が必要になってくるかもしれません。
人材の流出を防ぎ、より魅力ある企業へ
では具体的に、現在もしくは将来的な人材不足のリスクに備えて今からできる対策を考えてみましょう。
① 既存社員の従業員満足度(ES:employee satisfaction)を上げ、人材の流出を防ぐ
今いる社員がより長く働いてくれれば、人材不足のリスクはより減少するといえるでしょう。
労働環境への不満から退職者が出やすい環境では、人員補充までの間残った社員に業務負荷が集中し、さらに退職者が出る負のスパイラルになりかねません。
ES向上のためには結婚や出産、病気、介護などのライフイベントを経ても働き続けられる環境の整備、人事考課や給与の適正化、福利厚生の見直し、衛生管理体制の充実などがあるでしょう。
② 高年齢者を継続して雇用できる態勢を整える
③ 新卒採用で重視される「働きやすさ」の充実
学校法人産業能率大学公表の「2016年度新入社員の会社生活調査」によれば、働くうえで大事なのは「長時間、安心して働くこと」(57.8%)、「自分が成長すること」(53%)、「内容に見合う報酬が得られること」(40.8%)となっています。
上記は、ES向上の取り組みにより、対外的にも採用への呼び水となる効果が期待できます。
厚生労働省のサイトでも、人材確保対策が紹介されています。
④ AIやロボットの導入
もしくは ITツール・ソフトウェアを導入することで受けられる補助金もあります。
※ IT導入補助金
⑤ 外国人労働者の受け入れ
純粋に自社の継続的な発展のために、というのはもちろんですが日本の社会を担っていく層が今後ますます手薄になっていくこの現在の状況。
誰もが一度は自分事として、考えてみる必要がありそうです。