さまざまなハラスメント
職場においてセクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントなど、さまざまなトラブルが増えています。
その中で、パワーハラスメントは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係等の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」をいいます。
2018年9月からは厚生労働省、労働政策審議会で、パワーハラスメント防止対策について議論が行われており、国を挙げて対策を取らなければならない問題となっています。
パワーハラスメントといっても、上司から同僚から部下からなど、その形態は種々ありますが、今回は上司からのパワーハラスメント(以下、「パワハラ」といいます)に絞って、まとめていきたいと思います。
上司からのパワハラと会社への損害賠償
ここ最近、上司からの行動や言動がパワハラに当たるとして、労働者が会社に対して損害賠償責任を争うトラブルが増えている傾向にあります。
上司から厳しい行動や言動を受ければ、多くの場合部下として不快に感じますが、会社に損害賠償責任を求めるようなパワハラとは、どのような場合を指すのでしょうか?
従業員が上司のいじめ、パワハラに対し、会社と上司を相手取って損害賠償請求を起こした「東芝府中工場事件」の判決理由には以下の文言が見られます。
(中略)製造長には、その所属の従業員を指導し監督する権限があるのであるから、その指導監督のため、必要に応じて従業員を叱責したりすることは勿論、時に応じて始末書等の作成を求めることも、(中略)それ自体が違法性を有するものではない。
しかしながら、製造長の行為が右権限の範囲を逸脱したり合理性がないなど、裁量権の濫用にわたる場合は、そのような行為が違法性を有するものと解すべきである。
(東芝府中工事事件 東京地八王子支判 平成2年2月1日)
人格毀損的なものや合理性を欠くものは、違法性を有し、損害賠償責任を負うことになりますので、気を付ける必要があります。
上司からのパワハラと労災
上司からのパワハラにより、被害社員が健康被害を受けた場合、労災認定の対象となるのでしょうか?
厚生労働省は、労災の認定判断を行う際、「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」を認定基準のひとつとして挙げていますが、上司からのパワハラについては、「ひどいいじめ・嫌がらせ」「人間関係のトラブル」を強い心理的負荷としています。
相談しよう
上司からのパワハラ等のハラスメントの被害を受けた場合は、人事担当者や会社の相談窓口等に相談することが大切です。
会社内で相談しづらい場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の雇用環境・均等部等の公的機関でも相談することが可能ですので、1人で悩まず相談してみてください。
<参考>
・ 「しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」(厚生労働省)
・ 「労働基準判例検索-全情報」(公益社団法人全国労働基準関係団体連合会)
・ 「心理的負荷による精神障害の認定基準」(厚生労働省)
・ 「職場のパワーハラスメントについて」(厚生労働省)