65歳以上の就業者930万人時代~老人週間に考える職場の安全対策~
- 2026/9/15
- 労災

9月15日は「老人の日」、同日から21日までは「老人週間」です。
これらは、それぞれ老人福祉法に定められています。
「老人週間」と聞くと、地域での高齢者支援や介護、健康長寿などを思い浮かべる人も多いかもしれません。
一方で、現在の職場では、高齢者は「支援される側」だけではありません。60歳以上で働く人も珍しくなく、企業にとって高年齢労働者の安全と健康を守ることは、重要な課題となっています。
総務省統計局「労働力調査」によると、2024年の65歳以上の就業者数は930万人となり、21年連続で増加して過去最多となりました。
また、高年齢労働者は若年世代とくらべて労働災害の発生率が高く、災害発生後の休業期間も長い傾向があります。
老人週間を一つのきっかけとして、「長く働ける職場」だけでなく「安全に働き続けられる職場」を考えてみてはいかがでしょうか。
高年齢労働者の雇用は、すでに身近な課題
高年齢者の雇用については、企業に求められる対応があります。
高年齢者雇用安定法では、事業主が定年を定める場合、その定年は原則として60歳を下回ることができません。
また、定年を65歳未満としている事業主には、65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかの措置を講じることが求められています。
さらに、70歳までの就業機会を確保するための措置についても、2021年4月から事業主の努力義務となっています。
このように、高齢になっても働き続けることは、すでに特別なケースではありません。
ただし、「雇用を継続すること」と「安全に働ける環境を整えること」は別の問題です。
たとえば、60歳を超えた労働者が以前と同じ仕事内容を担当する場合でも、本人の年齢や身体機能の変化を考慮すると、若い頃と同じ条件が必ずしも適切とは限りません。
そこで重要になるのが、高年齢労働者の特性を踏まえた安全衛生対策です。
2026年4月から「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用
2026年4月1日から、「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用されています。
この指針は、改正後の労働安全衛生法に基づき、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業の管理などについて、事業者が講ずるよう努めるべき措置を示したものです。
高年齢労働者の安全衛生対策では、「本人が気をつける」だけでは十分ではありません。
たとえば、転倒を防ぐために、通路の幅を十分に確保する、通路や階段、出入口に物を放置しない、床面の水たまりや油などをそのままにしないといった職場環境の整備が考えられます。
厚生労働省の資料でも、高年齢労働者に多い労働災害への対策として転倒防止が挙げられています。
また、作業内容そのものについても、「今まで問題なくできていたから、これからも同じでよい」と考えるのではなく、作業姿勢、重量物の取扱い、作業時間、休憩の取り方などを確認することが大切です。
「年齢」で一律に判断しない職場づくりを
高年齢労働者への配慮というと、「仕事を減らす」「簡単な仕事だけを任せる」といった対応を想像するかもしれません。
しかし、重要なのは年齢だけを理由に一律の制限を設けることではありません。
同じ年齢であっても、体力や経験、得意な作業、生活状況などは一人ひとり異なります。
本人が安全に働ける条件を確認しながら、必要に応じて作業方法や作業時間を調整することが、事故の予防につながります。
そのためには、日常的に「作業で困っていることはないか」「以前とくらべて負担になっている作業はないか」と確認できる職場の雰囲気も重要です。
特に衛生管理者や安全衛生担当者は、高年齢労働者の労働災害について、発生した事故だけを見るのではなく、「なぜその事故が起きたのか」「職場環境や作業方法に改善できる点はないか」という視点で確認するとよいでしょう。
また、本人から相談を受けた場合には、「年齢だから仕方がない」と片付けず、作業環境や作業方法の改善によって解決できる問題がないかを検討することも大切です。
老人週間は、高齢者の生活や福祉について考える一週間です。
そして、高齢者が社会の中で役割を持ち、働くことを希望する場合、その就労環境について考えることも、高齢者を取り巻く社会を考える一つの視点ではないでしょうか。
企業にとって、高年齢労働者の雇用は人材確保という側面だけではなく、これまで培われてきた経験や知識を職場で生かしてもらう機会でもあります。その一方で、加齢に伴う身体機能の変化などによって、労働災害のリスクが高まる場合があります。
だからこそ、「長く働いてもらう」だけではなく、「安全に、無理なく働き続けてもらう」ための職場づくりが必要です。
9月15日から21日の老人週間を機に、自社で働く高年齢労働者の作業環境を見直してみてはいかがでしょうか。
「危ないところはないか」「負担の大きい作業はないか」「本人が相談しやすい環境になっているか」。
こうした小さな確認の積み重ねが、年齢にかかわらず誰もが安心して働ける職場づくりにつながります。
<参考>
・ 厚生労働省「老人の日、老人週間とは」
・ 総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
・ 厚生労働省「高年齢者の雇用」
・ 厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針について」
・ 厚生労働省「高年齢者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」















