2015年12月、福岡の企業の新入社員歓迎会の2次会で男性社員からセクシャルハラスメントを受けたとして、派遣社員であった20代女性が男性社員と企業に対し損害賠償を求めた訴訟の判決が行われました。その判決において、福岡地裁は「2次会は業務の延長だった」との判断を示し、男性社員だけでなく企業の賠償責任も認定し、双方に慰謝料の支払いを命じました。
上記は、地裁が「勤務時間外・職場外ではあるが、新入社員歓迎会の2次会は職務と密接な関連があった」として企業の使用者責任を認めた上での判決となっており、歓送迎会や2次会の場においても、企業としての使用者責任が発生することを認める内容となりました。
加害社員のみならず、企業にも賠償責任
職場内でセクハラが発生し被害者が法的な責任を追及する場合は、直接セクハラを行った加害者と企業に不法行為による損害賠償を求めることになり、職場でのセクハラは、加害社員だけでなく企業の使用者責任も問われることになります。
男女雇用機会均等法では、職場での性的な言動に対する反応によって、労働者が労働条件に不利益を受けたり、就業環境が害されることのないように、事業者に対して雇用管理に配慮するよう求めており、事業者は職場内で発生しうるセクハラに対し配慮する義務・責任があるのです。
業務時間外・職場外での企業の責任とは?
職場内でセクハラが発生した場合の企業の責任について上で述べましたが、今回の福岡における判決は、歓迎会の2次会で発生したセクハラが対象となりました。
実際のところ、職場外で発生したセクハラに関しては責任が及ばないと考えている企業の方も多いかもしれません。
しかし、今回のような「歓迎会」は企業のイベントとして企業の指示・管理のもとで行われたと判断されたからこそ、企業の使用者責任が問われる結果となったのです。
業務時間外の歓送迎会や飲み会においても、職務との関連が認められればその責任は加害者のみならず企業全体に及ぶのです。
「セクシャルハラスメント」という言葉は、昨今よく耳にするものの、他人事と思ってしまう方も多いかもしれません。しかし、「業務の延長」と認められる場においてのセクハラは企業としての責任が生じるということを念頭におき、社員全員がセクハラの防止に努めていかなければならないのです。