【世界エイズデー】働く世代が知るべき「U=U」|HIV/エイズの正しい知識と検査の重要性

世界エイズデーとは

12月1日は「世界エイズデー」。
赤いリボンをシンボルに、HIVやエイズに関する正しい知識を広め、偏見や差別をなくすことを目的とした国際的な記念日です。
HIV/エイズという言葉を聞くと「昔の病気」「自分には関係ない」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、日本でも毎年新たな感染が報告されており、決して過去の話ではありません。
医療が大きく進歩した今、HIV/エイズは「怖い病気」から「コントロールできる病気」へと変わっています。

2025年のキャンペーンテーマは「U=U(Undetectable=Untransmittable)」。
日本語では「検出されない=感染させない」と訳されます。
これは「HIV陽性の人が治療を続け、血液中のウイルス量が検出できないほどに抑えられた状態(Undetectable)であれば、性行為などを通じて他の人に感染させることはない(Untransmittable)」という意味です。
つまり、HIVに感染していても、治療をきちんと受けていれば、健康な人と同じように仕事や生活を続けることができる時代になっているのです。

HIVの今を知ろう

まずは、HIVとエイズについてご紹介します。

HIV(Human Immunodeficiency Virus):ヒト免疫不全ウイルス
体の免疫力を少しずつ弱めていくウイルスです。
感染してもすぐに症状が出るわけではなく、自覚症状のない時期が通常は数年から十数年続きます。

AIDS/エイズ(Acquired Immunodeficiency Syndrome):後天性免疫不全症候群
HIVによって免疫が大きく低下し、重い感染症などを起こしやすくなった状態のことです。
本来であれば自分の免疫力で抑えられる肺炎などの病気が重症化するようになります。

2024年の新規HIV感染者/エイズ患者報告数は994件で、2年連続で増加しています。
報告数が増加した背景として、新型コロナウイルス感染症の流行以降、保健所等での検査件数が減少しその後回復した影響が考えられます。
また、「HIVに感染していたことを知らずに、エイズを発症して初めて気付いた」というケースが、新規HIV感染者・エイズ患者数全体の約3割を占めています。

エイズ動向委員会の報告によると、新規HIV感染者は20〜30代、新規エイズ患者は30~50代の報告数が多く、働き盛りの世代に多い性感染症となっているのが現状です。
だからこそ「自分には関係ない」と思わず、HIV/エイズについて正しく知っておくことが、大切な備えになります。

HIV/エイズへの理解が広がる社会へ

HIVの感染経路は、主に「性的接触による感染」「血液を介しての感染」「母子感染」の3つです。感染力が弱いため、握手や会話、同じ食器を使う、職場で同じ空間を共有するなど日常生活の中で感染することはありません。
しかし、「検査を受けるのは怖い」「感染したら人生が変わる」といった誤解や偏見が根強く残っているのが現実です。
検査を受けるという行動は安心を取り戻すために受けるものです。
今は、自治体や保健所で無料・匿名で検査を受けられる体制が整っています。
「HIV検査相談マップ」では、全国のHIV検査が可能な施設や相談先の情報が載っているので、いざという時に必要な情報をすぐに調べることができます。

また、検査結果も短期間でわかる場合が多く、もしHIV陽性が確認されてもすぐに治療を始めることで健康を保ち続けることができます。
誰もが安心して検査を受けられ、治療を続けられる社会をつくるために、私たち一人ひとりの「知る」「受けとめる」「支える」という姿勢が求められています。

まとめ

エイズデーは、「HIV/エイズを予防するための日」というだけでなく、「HIV/エイズに関する正しい情報を知り、誰もが安心して暮らせる社会を考える日」でもあります。
U=Uという新しい概念が示すように、HIVは「治療を受ければ感染させない」病気になりました。過去のイメージにとらわれず、最新の知識を持つことで、不要な不安や差別をなくすことができます。
働く世代の私たちは、忙しい日々の中で健康を後回しにしがちですが、「もしもの時に相談できる場所を知っておく」「検査を受ける勇気を持つ」「偏見をなくす言葉を選ぶ」といった小さな行動が、大切です。
エイズデーをきっかけに、HIV/エイズについて一度立ち止まって考えてみませんか? 「知ること」が、自分と周りの人を守る力になるはずです。

<参考>
・ エイズ予防情報ネット「令和7年度『世界エイズデー』特設ページ」
・ 厚労省「HIVとエイズ」
・ エイズ予防情報ネット「四半期報告2025年」

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大石あや株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学卒業後、保健所で保健師として働き、地域住民の方々の健康支援に携わってまいりました。その経験を通じて、特に働く世代の方々の健康に関心を持ち、このたびドクタートラストに入社しました。コロナ禍を経て、多様性が求められる今の社会で、日々を頑張る皆さまに少しでも役立つ情報をお届けしてまいります。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、健康経営アドバイザー

【ドクタートラストの特定保健指導サービス詳細はこちら】
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