独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)は、2021年10月「令和2年度事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書」を発表しました。
本調査は、産業保健分野における保健師、看護師の活動状況や研修・研さん状況を把握するため、一般事業場や専門事業場(労働衛生機関・健康保険組合など)に実施したもので、4,198事業場から回答を得られました。
今回は、本調査結果報告書をもとに、保健師や看護師を雇用している企業の特徴、さらに雇用するうえで期待している役割などをわかりやすく解説します。
規模が大きい事業場ほど、保健師や看護師は雇用される傾向あり
回答を得られた4,198事業場のうち、保健師・看護師を「雇用している」のは1,302件と、全体のおよそ31%でした。
規模別にみると、雇用の割合が最も高かったのが労働者数1,000人以上の事業場であり、規模が小さくなるにつれ、雇用の割合は低くなっていきます。
一方で、99人以下規模の場合は、保健師・看護師の活用すらしていない事業場が78.6%と多くを占めている状況でした。
また、保健師・看護師を雇用している事業場では、「1人職場」(1人のみ雇用)である企業が49.4%(保健師・看護師の合計)でした。
事業場の規模別にみると、1人職場の割合が最も高いのが、労働者数300~499人の事業場であり、3人以上雇用しているのは1,000人以上の事業場と、事業場規模が小さいほど保健師や看護師の雇用割合が減り、一人職場である割合も高いことがわかります。
企業が保健師・看護師に期待しているのは「健康相談・保健指導」にとどまらない
保健師が雇用先の企業で担当している業務は以下のとおりです。
・ 健康相談・保健指導:96.5%
・ 職場巡視や安全・衛生委員会への関わり:85.8%
・ 労働衛生管理や健診実施などの保健事業の年間計画作成への関わり:83.0%
上記は看護師でも同様の傾向でした。
一方、事業場が保健師に期待している「活用していきたい業務」は以下のとおりです。
・ 健康相談・保健指導:46.1%
・ 労働衛生教育・健康教育の企画・講師:44.8%
・ 労働衛生管理や健診実施などの保健事業の年間計画作成への関わり:42.5%
看護師については、保健師の業務の調査結果と活用したい業務に大きな差がなく、看護師・保健師を雇用していない事業場では活用のイメージが浮かびにくい様子がうかがえました。
また、すでに担当している、あるいは期待を寄せている業務の筆頭には「健康相談・保健指導」があがっていますが、企業としてはそれだけにとどまらず「労働衛生教育や健康教育の企画」などでの積極的な講師役としての活躍を期待していることがわかります。
「企業」に就職した保健師・看護師は基礎研修の機会が得られにくい
本調査では、事業場に対する個人調査もあわせて実施し、保健師や看護師が抱えている課題や知識や技術の入手先なども尋ねています。
回答者のうち、最も多い勤務先は「製造業」で、全体の46%、年齢は30代と40代が大多数です。
調査結果によると、「初めて職域に就職した際に感じた課題」として多かったのは以下の2つで、これは保健師・看護師どちらも同様でした。
・ 企業での勤務が初めてであったこと
・ 労働衛生の3管理など産業保健についての知識がなかったこと
また、保健師が65.8%、看護師が69.6%が「初めて職域に就職した際に産業保健の基礎研修を受けなかった」と回答しており、企業側の求める業務を高品質で提供するうえでも、保健師や看護師の教育体制の整備が求められると考えます。
企業における「健康」への注目が高まっていることに伴い、保健師や看護師の職域需要も高まっています。
実際、健康面でハイリスクな社員の健康相談や保健指導だけではなく、会社全体の風土づくりや「健康」を保ち続けるための予防的介入としての労働衛生教育や健康教育にも、会社して取り組み始めている企業も増えています。
健康課題を抱えている企業の皆さまは、保健師や看護師の導入を、ぜひご検討ください!
<参考>
独立行政法人労働者健康安全機構「令和2年度事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書」