自分も相手も大切に!~アサーティブな人になるためのトレーニング「DESC法」~

自分も相手も大切に!~アサーティブな人になるためのトレーニング「DESC法」~

アサーティブとは?

ビジネスやコミュニケーションの場面で、「アサーティブ(assertive)」が注目を集めています。
アサーティブを辞書で調べると、「断定的な、積極的な、自信に満ちた、自己主張する」等が出てきて、日本人にとっては、「自信満々で押しが強い人」と印象を受けるかもしれません。
しかし、英語圏では「自分の考えをしっかり持った人」という肯定的な印象として捉えられることの多い単語です。
アサーティブとは、「自分も相手も大切にしている状態」として知られており、アサーティブな態度を目指すことは、対人関係でストレスを感じやすい人にはとても役に立ちます。
また、「アサーショントレーニング」としてさまざまなトレーニング手法が紹介されており、学び実践することで、ストレスの低減だけではなく、職場での良好なコミュニケーションに、ひいては会社の生産性向上につながるとして、多くの企業で研修として取り上げられています。
「アサーショントレーニング」は、歴史的に人権擁護や不安症の方への治療法として誕生したという背景があります。
「ココロ」を変えることは難しいけれど、「行動や言動」を変えることで「ココロ」にも変化をもたらすことを目指してさまざまな手法が開発されています。
今回は、アサーショントレーニングの代表例である「DESC法」をわかりやすく紹介します。

あなたはアサーティブですか?

まずは、「アサーティブな態度」とはどのようなものか具体的に説明します。
心理学者ウォルビィ(Wolpe,J)は、人間関係における自己表現には以下の3タイプがあるとしています。

1. 非主張的(non-assertive):自分より他者を優先し、自分のことを後回しにするタイプ
2. 攻撃的(aggressive):自分のことだけを考えて他者を踏みつけにするタイプ
3. アサーティブ(assertive):自分のことをまず考えるが他者にも配慮するタイプ

家族や友人、職場の同僚や上司と話すとき、あなたは下のうちどの主張タイプの傾向ですか?
人によっては、家族には「2. 攻撃的」になりやすいが、特定の上司には「1. 非主張的」となってしまうなどの特徴があるかもしれません。
しかし、メンタルヘルスの維持・向上のみならず、人間の基本的な姿勢として「3. アサーティブ」が望ましい姿勢であることは、皆さんにとっても異論はないと思います。
ここで大切なことは「他者」のことを尊重・配慮するのですが、まずは「自分」を大切にすることです。
「自己受容」「自己肯定感」が大切と言われていますが、家庭環境・子ども時代の失敗経験等で「自分」を適切に大切にできるというのは基本的でありながら、難しい方が多いのが現状です。

アサーショントレーニング

それでは、自分を適切に大切にした上で、相手も大切にする「アサーティブ」になるためにはどうしたらいいでしょうか。
アサーショントレーニングで代表的な「DESC法」をご紹介します。

D:Describe(描写する)
客観的に状況・事実を伝える
E:Express(表現する)
自分の意見や感情を表現する
S:Specify(提案する)
相手に求めているものを言葉で伝える
C:Choose(選択肢を与える)
相手が提案を受け入れた場合、受け入れない場合の次の選択肢を与える

DESC法は、一つしかない出来事(事実)に対する自分の意見や感情を客観的に捉えること、そこから、解決策や代案を提案し、相手に選択権を与え選んでもらうトレーニングです。
たとえば、上司から終業間近にボリュームのある仕事を「急ぎで」と依頼されたとします。
依頼されたあなたは仕事のあと、大切な用事があるとしたら、どのように上司に対応しますか?
DESC法に従って整理してみましょう。

D:Describe(描写する)
上司から仕事を依頼された。
終業までには終わらない様子。
「急ぎで」と言われた。
どの程度の「急ぎ」なのか確認が必要である。
E:Express(表現する)
上司も忙しそうだから手伝ってあげたいが、大事な用事がある。
S:Specify(提案する)
どの程度の急ぎなのか確認。
明日までなのであれば、明日の朝早く来て対応することも可能であると提案してみる。
C:Choose(選択肢を与える)
今日中に必要だという返答である場合、代案として、自分の代わりに対応してくれる人を一緒に探すことを提案する。

ここで、自分の意見や感情を押し殺して上司に従うことを続けてしまったり(非主張的)、「こんな直前で仕事を振ってくるなんてあり得ない」と上司に反発してしまう(攻撃的)のが良くないはわかりますよね。

おわりに

このように、アサーショントレーニングでは、まず事実や自分の感情を客観的に捉えるように試みることから始まります。
「自分を知って、自分を大切にする」ことは、メンタルヘルスの維持のために基本かつ重要なことです。
さらに、自分との向き合い方は他者との向き合い方にも通じると言えます。
またその後、解決に向けた建設的な方策を検討し、共に探っていく姿は相手との信頼関係の構築につながるでしょう。
コロナ渦でリモートワークの増加や不安感から不調を感じる人が増加する中、対人関係でモヤモヤを感じたときは一度、DESC法を試してみてはいかがでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

南 未来株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

学生時代より予防医療やメンタルヘルス支援に興味を持ち、大学院で産業保健(Presenteeism)の研究をしました。大企業での産業保健師を経て、海外にて専業主婦、行政保健師、中企業の保健師も経験してきました。保健師として、会社組織や個人が自立して健康を構築していけるように、エンパワメントの視点を忘れずに支援していきたいと思います。また、女性として、親として、妻として、ワークライフバランスやダイバーシティについても発信していきたいです。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、精神保健福祉士、両立支援コーディネーター
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】休職者、在宅勤務者をサポート「アンリケアサービス」~その魅力と導入の流れ~

一目置かれる健康知識

  1. 「良い二度寝」と「悪い二度寝」がある?すっきり目覚めるポイントは20分
ページ上部へ戻る