日本オリジナルのカウンセリング「内観療法」を体験しよう
- 2019/3/4
- メンタルヘルス
みなさん、日本発祥の心理療法をご存知ですか?
和室の隅に2つ折りの屏風を立てかけ、その中(半畳スペース)に1日15時間、1週間籠って行うもの、と聞くとちょっと驚かれるかもしれませんね。
精神分析や認知行動療法などを代表とする心理療法は、もともと欧米から生まれたものですが、西洋の二元論的な考え方が日本文化に合わないと感じる方もいます。
そこで、今日はより日本人の気質に合った日本発祥の心理療法である「内観療法」を、私の体験も踏まえてご紹介します。
内観療法は吉本伊信が作ったもので、メンタル症状や問題行動にあえてフォーカスせず、「身調べ」によって自分を知り、固着している観念や過去への捉え方を変えてゆき、抱えている問題、心身症状や問題行動を回復させるというのが特徴です。
病院などでメンタル疾患の治療として取り入られているだけでなく、企業研修、学校教育、更生目的として少年院・刑務所などでも幅広く行われています。
内観には1週間かけて行う「集中内観」と日々の生活でできる「日常内観」があります。
冒頭に書いたものは、集中内観にあたり、毎朝6時に起床し消灯の21時までひたすら自分自身に向き合います。
かなり大変な作業ですが内観療法の基本のスタイルになります。
内観療法の進め方
作業方法は決まっており、以下のルールに従って自己内省を進めていきます。
人生を生まれた時から時系列に3~5年区切りに振り返り、これまで自分に関わりの深い人たち(母、父、兄弟、配偶者、子供…)に対して次の3つのテーマで内省します。
① していただいたこと
② して返したこと
③ 迷惑をかけたこと
それぞれ、2:2:6の割合で、なるべく鮮明に描写できるように思い出します。
傍から見ると、まるで罰ゲームをさせられているようですが、スマホもテレビもない、外からの刺激を遮断した環境に身を置くことで、徹底的に自分自身に向き合うことができるのです。
作業中は2時間ごとに面接者が訪れ(1日7、8回)、その時間内に調べたことについて5分ほどで報告します。
報告後はまた屏風を閉めて次の3~5年間について内観します。
内観を体験して
私自身、臨床心理学を勉強していた大学院時代に、研究所で集中内観に臨みました。
開始前は、1週間も飽きてしまうのではないか、途中でギブアップして逃げ出してしまうのではないか、と正直不安だらけでした。
実際、始まって3日間は落ち着かず、なかなか集中できず時間が早く終わらないか時計の針を見たり、そもそも集中内観に臨んだことを後悔したり、恥ずかしながらウトウトと寝てしまうこともありました。
しかし、4日目に入ってからは徐々に環境に慣れ(受け入れられるようになり)、ようやく落ち着いて内省を深める態勢が整ったように実感しました。
自分では記憶の底に置き忘れていた、幼少期に両親にしてもらった些細なことまでもがダムが決壊したかのように溢れ出てきました。
また、「①していただいたこと」が多いのにくらべ、「②して返したこと」の少なさ・小ささと「③迷惑をかけたこと」の大きさ・多さから、自責の念に駆られて胸が苦しくなりました。
一方で、これだけ酷いことをしてきたにも関わらず、両親からしていただいたことの偉大さにと無条件の愛情を感じずにはいられず、涙が止まらない時間も体験しました。
1週間の内観を終えると、無事に終えられたことの安堵感と達成感でいっぱいになったのはもちろん、内観前は「なんで~してくれなかったのか」「もっと私を認めて欲しかった」と満たされなかったことを責める気持ちが強かったのですが、自分の弱さ、微力さ、非情さに落胆しながらも、両親から愛情を注いで育ててもらったのだという満たされた気持ちと、感謝の気持ちですっきり新鮮な感覚を得ることができました。
日常内観のすすめ
普段の忙しい生活をしていると1週間の集中内観に参加することはハードルが高いものですが、日常でもチャレンジしてみることは可能です。
休みの日や1日の終わりに落ち着いた時間と場所を確保して、3つのテーマに沿って考えてみる時間を作り、内観を少し体験してみられてはいかがでしょうか。