現在の裁量労働制は見直すべき
- 2018/2/28
- ワークライフバランス, 働き方改革, 労働安全衛生法, 労働環境, 残業削減
ここ最近「裁量労働制」の働き方についてよく話題になりますが、裁量労働制とは何であり、何が問題となっているのかご存知でしょうか。
この記事では、問題点と企業としてどう取り組むべきか考えていきたいと思います。
裁量労働制とは
裁量労働制とは、業務の遂行、方法を労働者の裁量に委ねるという働き方です。
「最大限のパフォーマンスで自身の仕事をこなすこと」を目的としてるため、あらかじめ決められた時間を働いたと見なし、業務の行うスピードや出退勤も労働者の意思にある程度任せています。
裁量労働制は現行法にもあり、現行法では労働基準法38条の3以下に定めがあります。
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第1号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第2号に掲げる時間労働したものとみなす。
1. 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、
労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
2. 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
3. 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
4. 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
5. 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
6. 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2つがあります。
専門業務型とは新商品若しくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務など、専門性に富み、完成などに明確な納期を設けづらい業務がおもとなり、企画業務型とは企業の中枢にあり、企画や調査を行う、いわゆる事務系の業務を担う場合をさします。
具体的な分類等については、下記参考欄をご覧ください。
問題点
さて、早速ですが、この裁量労働制には問題があります。
それは労働者の裁量によって業務を行えると定められてはいますが、業務量については定められていないということです。
つまりと使用者は制限なしに労働者へ業務を依頼することができてしまうのです。
極端な話をすると、企業は残業はないとみなした労働者へ膨大な量の業務を依頼することができますが、労働者側は業務量の多さにたとえ100時間残業をしてもその月は残業はしていないものと見なされてしまいます。
そのため、給料も残業なしの労働時間分のみが支払われることになるのです。
現裁量労働制は見直しが必要
現在の裁量労働制では上記のような点が問題となっており、大手不動産会社では企画業務型の労働者に対し対象業務外の営業活動を行わせていたとして、労働局より特別指導を受けています。
このように労働範囲や業務量について曖昧であるため、「残業代なしの働かせ放題」のような状態になってしまっています。
裁量労働制であるから、業務を早く終えプライベートの時間を作る・保育園に預けている子どもを迎えに行けることが必ずしも可能になるわけではありません。
また、2019年4月からこの裁量労働制について適用範囲を拡大する見込みでありましたが、今回の問題を受けて1年延期をする検討に入りました。
ただ単に延期するだけでは解決にはなりません。
「働き方改革」としてもっと労働者の立場に立ち、「働く方法」だけではなく、「1人ひとりの業務量」に視点を向けて見るとよいかもしれません。
参考:
【厚生労働省】専門業務型裁量労働制(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/)
【東京労働局】専門業務型裁量労働制の適正な導入のために(http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/roudou/jikan/pamphlet/4special2.pdf)
【厚生労働省】企画業務型裁量労働制(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/kikaku/)
【東京労働局】「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために(http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/201221613571.pdf)