人事担当者が知っておきたい「産業医面談」の調整法

産業医が行うべき数々の面談

企業が産業医に行ってもらう業務のなかで重要なもののひとつに「面談」があります。今回は、意外に知られていない面談実施のポイントを解説します。

労働安全衛生法とその関連法令の定めに基づいて、事業者は従業員を産業医と面談させて、
従業員の健康を保持するための措置について、面談をした産業医の意見を聴くことが義務付けられています。

主な面談としては、
・健康診断結果をもとにした面談
・基準時間を超えて残業した従業員の面談
・健康相談
・ストレスチェック結果をもとに高ストレス者から希望があった場合の面談
・休職している従業員が復職する時の面談

これらの他にも、会社の規定で従業員の健康状態等の把握のために、
産業医との面談を定めているところもあるかと思います。

限られた時間のなかで、産業医面談をどう調整するか

嘱託産業医と契約している事業場であれば、毎月の産業医訪問の時間は、ある程度決まっていることが多いのではないでしょうか。
例えば、「毎月第3水曜日に2時間訪問」といったかたちです。
産業医はその2時間の中で、職場を巡視し、衛生委員会に出席し、必要に応じて従業員と面談を行って意見書を作成し、
衛生管理者と打合せをし・・・と様々な業務を行うわけですから、かなりタイトなスケジュールが組まれることは想像に難くありません。

仮に、衛生委員会への出席が30分、職場の巡視で20分としても、訪問時間が2時間である場合は、残り時間は70分。
事業者は、この時間内で産業医による面談を設定し実施しなければなりません。
その際に必要なのが1人当たりの面談時間の把握です。
どのような面談であっても、少なく見積もって概ね15分程度は必要になるはずです。
職場復帰時であったり、メンタルヘルスに関わる面接だと、さらに時間が必要になります。
1人当たり15分の面談時間とすると、70分間では4人程度。
実際に面談が必要な対象者数は、この時間枠の中に収まっていますでしょうか。

「そもそも2時間では時間が足りない……」
面談対象者が多い場合はその通りです。
また、1人について15分という時間も、仮の時間設定ですから、
実際にはさらに時間がかかることが想定されます。

法令で定められた産業医による面接指導は、「遅滞なく実施」しなければならないとされています。
遅滞なくとは、正当な理由、合理的な理由がない限り「すぐに行う」ということです。
特に、健康診断結果をもとにした面談、基準時間を超えて残業した従業員の面談、
ストレスチェックの結果をもとに高ストレス者から希望があった場合の面談については、これに該当します。
産業医との面談は、遅くとも、必要性が生じた時から1か月以内には行われなければいけません。

しかし、産業医の訪問時間を増やすにしても、時間には限りがあります。
優先順位をつけて、面談を実施していかなければならないのが現状です。
では、どのようにして優先順位を決定していけば良いのでしょうか。

わからないことは産業医に訊け

いろいろな企業から、面談の優先順位についてご相談をいただくのですが、
私は、「面談の優先順位は産業医に相談してみてはいかがでしょうか」とお答えしています。
産業医は、労働者の健康管理を行うのに必要な知識を備えていますし、選任された事業場の組織や労働環境等に詳しい存在です。
その産業医の知見を活用しない手はありません。
そもそも、実際の面談に係る時間についても、産業医でなければ予測は難しいでしょう。

そこで、面談の必要性が出てくる前から、産業医と共に面談の優先順位や時間の大まかな指針を決めておくのです。
例えば、直近の健康診断結果が思わしくなく、かつ、残業時間が多い従業員について優先順位を高く設定し、残業時間が多くても直近の健康診断結果が良好な従業員の優先順位は低くするなど、つくった指針に基づいて実施することで、限りのある産業医の時間をより有効に使うことができるようになるでしょう。
そのためにも、普段から産業医とは十分にコミュニケーションをとり、必要に迫られる前に体制づくりをしておくことが重要といえます。

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