増える中途採用 ~日本型雇用慣行見直しへ~
- 2017/7/20
- 労働環境
日本型雇用慣行という言葉をご存知でしょうか。
「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」が軸となったこの日本の雇用制度は、1990年代から変化しています。
中でも昨今増えている中途採用について、最新の情報をお伝えします。
増加傾向にある中途採用
2016年1月に発表したリクルートワークス研究所の「中途採用実態調査」によると、
2016年度の中途採用の見通しについて、「増える」(14.1%)が「減る」(3.7%)を大きく上回り、さらなる増加傾向がみられます。
従業員規模別にみても、従業員1,000人未満企業、1,000人以上企業ともに、中途採用の見通しが「増える」が「減る」を上回り、規模に関係なく中途採用に対するニーズが高いことが分かります。
業種別でも、すべての業種において「増える」が「減る」を上回り、特に飲食サービス業、情報通信業、小売業など人材が不足している業種でのニーズが高くなっていることが分かります。
日本型雇用慣行の見直しへ
経済同友会は、「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」の3つの柱で構成される日本型雇用慣行の改革案を提示した「人材の採用・育成・登用委員会報告書」を明らかにしています。
上記の報告書の中では、中途採用・キャリア採用の拡大や、日本型職務記述書をベースとした納得性ある評価、定年制の廃止などを進め、未来志向の持続可能性の高い制度に改めていく必要があると述べられています。
ただ、欧米方式をそのまま導入するのではなく、日本人の「心の態度」である
① 社会のために役立とうとする「公の意識」
② 秩序・規律を尊び恥ずかしいことをしない「武士道」の精神
③ 島国として異文化を取り込みやすい文化
の3つを生かしつつ、生産性や会社への愛着心を向上させ、納得感のあるシステムへ改革する必要性を示しています。
具体的な改善策とは
具体的な改善として、まず日本型雇用慣行と大きく関わりのある新卒一括採用・年次管理の見直しが挙げられます。
現行では、採用人材の多くが均質化されていることで、仕事とのミスマッチやイノベーション創造の阻害などのデメリットを生み出しています。
それを解消するためには、中途採用・キャリア採用の費用を3分の1以上まで拡大し、年功序列制を見直すことが効果的とあげられています。
そのため、今後は職務記述書に基づき、個人の職務を明確化したうえで価値創造基準で評価すること、年齢ではなく社会に対する価値創造への貢献に基づく賃金・雇用形態とし、併せて定年延長や再雇用制度の導入、役職定年制の弾力的運用を行うことが効果的な改善案として挙げられています。
企業別にとって、賃金体系や評価制度を変えていくことは、大きな労力を要します。
しかし、結果として優秀な人材の流出を防ぎ、同時に新たな戦力を得ることは、企業の力を確実に強くします。
採用について課題を抱えられる企業様も少なくないと思いますが、皆さんの企業で取り入れられる部分があれば、うまく取り込み、よりよい人材の獲得に繋げてください。
参考
「中途採用実態調査(2015年上半期実績、2016年度見通し)」(リクルートワークス研究所)
「中途正社員を3分の1以上に 日本型慣行見直せ 職務記述書で納得性向上 同友会が委員会報告書」(労働新聞社)