9月21日から30日は秋の全国交通安全運動期間で、30日は交通事故死ゼロを目指す日でもあります。
全国交通安全運動と聞くと、検問が多く、取り締まりが厳しくなるというイメージがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、全国交通安全運動に合わせた「交通労働災害」についてのお話です。
死亡災害の約2割が交通労働災害
労働者が業務中に起こった災害で死亡してしまう、死亡災害。
交通労働災害はその約2割を占めています。
まずは交通労働災害の例を見てみましょう。
例1:原付バイクで訪問途中(1名死亡)
訪問介護のため利用者宅から事務所へ原付バイクで移動する途中、右側方を走るトラックと接触。
その後トラックの後輪 にひかれ、30分後に死亡。
例2:現場へ向かう途中 (7名負傷)
早朝、労働者8名を乗せ建設現場に自動車2台で向かう途中、1台がゆるいカーブの凍結した路面でスリップしガードレールに激突。
避けようとした後続車も対向車線に飛び出し路肩から転落。
例3:施設利用者送迎中 (1名死亡6名負傷)
事務所から介護サービス利用者宅に利用者を送迎中、信号がなく見通しの悪い交差点に一時停止せずに進入し、左側から来たトラックと衝突。
利用者1名が死亡、労働者2名を含む6名が重軽傷。
例4:新聞配達の自転車(1名死亡)
夜明け前に新聞配達のため自転車で国道を斜めに横断中、交差点を青信号で進入してきた大型トラックと衝突し死亡。
なお、被災者は安全ベストや保護帽を着用していなかった。
驚いたことに一般的に多いと思われるバスやタクシー、トラックなどの運輸交通業よりも、第3次産業における交通労働災害の割合が多く、全体の4割程度となっています。
運輸交通業においては、近年多く発生した長距離ドライバーやツアーバスの事故を受け、「交通労働災害防止のためのガイドライン」が改定されるなど事故防止に向けて活発な活動がなされてきました。
しかし一方で、第3次産業ではこういった防止活動が不十分であり、いまだ多くの交通労働災害が発生しています。
交通労働災害を防止するために、各企業は次のような取り組みを行っていく必要があるでしょう。
交通労働災害を防止するための取り組み例
①交通労働災害の状況を把握
まずは安全衛生委員会の場を使って、自社の労働災害の状況をしっかりと把握しましょう。
場所や時間帯などを確認することで交通安全情報マップなどを作成することができます。
また、交通労働災害は路面が凍結する12月に多く発生していますので、季節による情報も加える必要があるでしょう。
②教育の実施
安全運転の心がけを説く啓蒙教育だけでなく、十分な睡眠時間の必要性や飲酒による運転への影響など、日々の生活から体調を整える必要性があることを気づかせる教育も行いましょう。
③産業医による面接指導
業務で運転が必要な労働者において、残業時間が長くなっている場合は産業医による面接指導を設定し、運転に支障がないか等確認を行うようにしましょう。
④適正な運転計画の作成
連続して長時間の運転が発生しないような休憩時間の設定や、視認性が悪くなる早朝や深夜の運転を避けることが必要です。
また、運転と商談の時間が連続し、長時間労働とならないように注意することも大事でしょう。
上記の取り組みを続ければ、社員にも安全運転の意識が芽生え、交通労働災害の減少に繋がります。
ただ、しっかりと担当者を決めて推進していかなければ、期待した効果を得られぬまままマンネリ化しかねませんので、交通労働災害防止のための管理者を選任し、目標を定めることも大変重要です。
交通労働災害をゼロにするために
交通労働災害ゼロに向けた取り組みは、その必要性を社員に認識してもらうことがスタートラインとなります。
また、交通労働災害が発生していない場合は、運転中のヒヤリハットを報告することが今後の防止につながります。
まずは安全衛生委員会で状況をつかむところから初めてみましょう。
今年の全国交通安全運動では、以上のような内容を取り入れてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省:交通労働災害を防止するために