わが国の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は、2014年が26%。2060年には39.9%にまで拡大することが予想されています。
日本では、高齢化に伴い、労働者の定年延長や退職者の再雇用が促進されています。
しかし、労働現場に高年齢者が増えることにより、高年齢者の労働災害が発生している現状があります。
加齢変化がもたらす労災
高年齢者の労働災害で最も多いのは、「墜落・転落・転倒」といわれています。
発生原因としては、加齢に伴う以下が挙げられます。
・ 平衡感覚の低下
・ 筋力低下
・ 視力、聴力低下
・ 全身鋭敏性の変化
重量物の取り扱いなどで、重篤な労働災害(死亡や脊椎損傷、手足の切断、長期化する骨折)へつながるケースもあります。
また、高年齢者は、傷害によって休業が長期化する傾向にあります。
その他、高年齢者の場合、腰痛や熱中症においても予後に大きな影響を受ける可能性が高いです。
労働災害を防止する「3つの管理」と「2つの意識」
このような高年齢者の労働災害を未然に防止するためには、「3つの管理」と「2つの防災意識」が重要です。
それは、①作業管理、②作業環境管理、③健康管理という3つの管理と、①身体機能低下に伴う職場の防災意識、②基礎疾患に関連する防災意識、という2つの防災意識を持つことです。
では、まず「3つの管理」に関してご説明します。
1. 作業管理
作業管理は、有害要因を曝露しないような作業方法や、作業負荷を軽減するような作業方法を定め、定めた作業方法が適切に実施できるように管理することです。
2. 作業環境管理
作業環境管理は、作業環境中の有害因子の状態を把握し、改善することにより、良好な状態で管理することです。
3. 健康管理
健康管理は、以下の流れで行います。
労働者個人の健康の状態を健康診断等でチェックする
⇓
健康の異常を早期に発見する
⇓
病気の進行や増悪を防止し、元の健康状態に回復するための医学的および労務管理的な措置をする
労働者の高齢化に伴い、健康を保持増進して労働適応能力を向上することまでを含めた健康管理が必要といえます。
次に、「2つの防災意識」をご説明します。
1. 身体機能低下に伴う防災意識
加齢に伴う身体機能の低下は、無自覚の身体機能の低下もあることを本人が知る必要があります。
高年齢者は、多くの経験から高度な能力を備えています。また、予測能力に長けています。
そのため、「ここは~が起こる可能性があるのでは?」と危険を予測する意識を本人が持てるよう働きかけることが、防災につながるといえます。
2. 基礎疾患に関連する防災意識
高年齢者は、若年者に比べて基礎疾患を有する割合が高いです。
基礎疾患の状態を本人が把握し、自己の健康状態と向き合いながら働く意識を持つ必要があるでしょう。
健康寿命が延伸しているからこそ、生涯現役で働き続ける職場環境づくりが必要です。
5つの視点から高年齢者の労働災害を防止してみてはいかがでしょうか。
< 参考資料 >
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
高齢者雇用時代における産業保健