産業医と企業が良好な関係を保つ秘訣
- 2016/2/9
- 産業医
同じ産業医の方が、5年・10年と一つの企業の産業医を続けることは、それほど珍しいことではありません。
その反面、1年未満で企業側から産業医の交代についての相談を受けることもしばしばあります。
長く産業医を続けるには、何が必要なのか? 日ごろ企業に産業医をご紹介している私なりに、考えられる条件を挙げてみたいと思います。
解決を急がず、放置もしない距離感
企業の産業医になったとき、まずすべきこと。
それは、何が問題点なのかを知ることだと思います。
健康診断の結果が悪い人が多い、残業が多い、メンタル不調者が多いか、などです。
問題点がわかってきた後、どのように改善していくかを模索することになりますが、産業医経験の浅い先生に時折見られるのは、産業医として成果を上げることを急ぐあまり、空回りしてしまうことです。
一度に多くの問題を解決しようとすると、企業側がついていけない場合があります。
その意味では、問題点を探すことはもちろん大事ですが、「企業を知る」ことが最も大切ではないかと思います。
どのような職場で、どのような業務をしているのか。これを把握することは、当たり前のようでなかなか難しいことです。
衛生委員会や企業の担当者と多くのコミュニケーションをとるようにしないと、その企業の本質を知ることは困難です。
その中で問題点に対して優先順位をつけ、解決に向けての提言を行っていくことで、企業側も納得して問題解決に取り組んでいけるようになるでしょう。
問題解決を急ぎすぎず、かといって放置しないという調整力が、企業と産業医との良い関係性が長く続く一つの要因となります。
安心感を与える存在に
嘱託産業医は、その多くが1ヶ月に1回・数時間程度の企業訪問を行っていると思われます。
訪問している時は、その企業の業務に集中するとして、訪問しない日は、どうしているでしょうか?
普段は病院に勤務したり、他の企業へ訪問したりと、多忙な日々を送っているため、一つの企業だけに注力することは不可能ですね。
先日、産業医歴20年以上の超ベテラン産業医とお話をする機会がありました。彼がこんなアドバイスをくれました。
「一つの企業を長く担当したいと思うならば、企業に「安心感」を与えることが大事だと思いますね。私は企業の担当者に、『何かあれば24時間いつでも連絡をくださいね』と伝えています。たったこれだけで、企業側に与える安心感はとても大きなものになるような気がします。これまで数十社に同じように伝えていますが、さすがに深夜に電話があったことはありませんよ(笑)健康相談やメンタル対応など、産業医業務はもちろん大切ですが、『安心感』を与えることがとても大切ではないでしょうか」
私は、そのお話を聞いて、なるほど!と思いました。
企業に安心感を与えることにより、企業と産業医との関係性が良くなり、結果として労働者の健康管理にも良い影響が出てくるでしょう。
企業と産業医の関係の理想形は、企業のことを熟知した産業医が、できるだけ長い期間を担当することではないでしょうか。