【日本生産性本部調査】時間当たり労働生産性5,543円で過去最高、一方で実質賃金は1997年以降で最低

2025年11月10日、公益財団法人日本生産性本部が「日本の労働生産性の動向2025」を公表しました。
本調査は、人口減少や人手不足が深刻化する中で、生成AIをはじめとするデジタル技術を活用した生産性向上の必要性が高まっていることを背景に、日本の労働生産性の現状を定点観測・分析したものです。
2024年度の状況を中心に、経済成長や働く人の豊かさを実現する政策立案に資することを目的として実施されました。

労働生産性の全体動向

調査では、2024年度の日本の時間当たり名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)は5,543円で、現行基準のGDPをもとに計算できる1994年度以降で最も高い水準になったことが明らかになりました。
物価上昇を織り込んだ実質ベースの労働生産性上昇率は前年度比+0.2%で、4年連続のプラスとなっています。
四半期ベースでは、2024年1~3月期から2025年4~6月期まで6四半期連続でプラスが続いており、2000年以降で最も長い生産性上昇局面を迎えています。
一人当たり名目労働生産性も907万円と、初めて900万円を超えました。
実質経済成長率(+0.7%)が潜在成長率をやや上回る中、就業者の増加(+0.5%)が生産性上昇率を下押しする要因となっていますが、全体としては緩やかな上昇基調が続いています。
また、日本の労働時間は1,630時間強で推移しており、1990年代半ばの1,900時間超から15%近く短縮されたことが、時間当たり生産性の改善に寄与しています。

産業別の動向と課題

産業別にみると、労働生産性の動向には大きなばらつきが見られます。
サービス産業では、2024年度の労働生産性上昇率は+0.7%でした。
主要17産業のうち労働生産性が改善したのは7分野にとどまり、運輸業・郵便業(前年度比+3.8%)が最も高い伸びを示しました。
これは時間外労働の上限規制が適用されたことで労働投入が減少する一方、需要は底堅く推移したことが要因です。

一方、生活関連サービス業や飲食店(ともに-0.9%)、宿泊業(-3.8%)といった対個人向けサービスは、売上などのアウトプットは堅調だったものの、雇用や労働時間の増加が影響して労働生産性上昇率がマイナスに転じています。
製造業は、2024年度の労働生産性上昇率が前年度比-0.9%と3年連続のマイナスでした。
対象20業種中15分野で労働生産性が低下しており、電子部品・デバイス(+6.9%)や業務用機械(+1.7%)など一部の業種を除いて厳しい状況が続いています。
特に汎用機械(-5.5%)や情報通信機械(-6.5%)では生産活動の落ち込みが深刻で、それが生産性低下につながった分野が多くなっています。

賃金・物価との関係と課題

労働生産性と賃金・物価の関係では、重要な課題が浮き彫りになっています。
2024年度の消費者物価指数(CPI)は総合で前年度比+3.0%と、2022年度から3年連続で3%以上の上昇率となっています。
特に光熱・水道(同+7.8%)や食料(同+5.0%)の上昇幅が大きく、幅広い分野で物価が上昇しています。

一方、実質賃金は2025年1~3月期に1997年以降で最も低い水準に落ち込むなど、緩やかな上昇が続く実質労働生産性とは対照的な推移になっています。
賃金支払い能力を高めるには生産性向上が欠かせませんが、実質労働生産性が上昇する中で実質賃金が下落する傾向はここ数年変わっていません。

産業別にみると、製造業20業種の半数にあたる10分野では、労働生産性が低下する中で賃金が上昇しており、賃上げが先行するような状況にあります。
これまでは多くの分野で賃金の上昇幅が労働生産性の上昇率を下回っていましたが、そうした状況は過去のものになりつつあります。

また、単位労働コスト(実質付加価値1単位あたりの名目賃金)は2024年度に過去最高水準で推移しており、企業のコスト負担が重くのしかかっている実態があります。


本調査からは、日本の労働生産性が緩やかながらも上昇基調にある一方で、産業間格差や賃金・物価とのギャップが顕在化していることが改めて示されました。
人口減少が進む中で就業者の増加を期待できない状況において、企業は業務効率化や高付加価値化、生成AIなどのデジタル技術活用による生産性向上策を一層進める必要があります。
また、持続可能な賃上げを実現するためにも、生産性向上と賃金上昇を連動させる仕組みづくりが重要です。
一般社員・人事労務担当者ともに、自社の生産性向上策を具体的に検討し、働く人の豊かさと企業の競争力向上を両立させる取り組みが求められています。

<参考>
・ 公益財団法人日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2025」

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庄司 太郎株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学卒業後、製薬企業に勤めていました。仕事を進めていくなかで、多忙により体調を崩してしまう社員を見て、「社員の健康管理をお手伝いしてみたい」と考えたことからドクタートラストに入社しました。前職とは異なる視点からのアプローチにはなりますが、皆様の健康を支えていけるよう努めています。

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