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- 熱中症予防対策と新型コロナウイルス感染症予防の両立も!5月12日更新版「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第5版」
4月25日に発令された3度目の緊急事態宣言。
幅広い都道府県に発令されており、社内でも感染者や濃厚接触者が発生したり、身近な人が感染したと聞いたり、新型コロナウイルスの脅威が身近に迫ってきた人もいるでしょう。
5月12日、日本産業衛生学会と日本渡航医学会が共同発出している「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」が更新されました。
今回は「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の更新内容をワクチンや熱中症対策等の点からわかりやすく説明いたします。
前回の更新内容は以下の記事を参照ください。
「積極的疫学調査要領改訂の影響」による濃厚接触者特定後の必要な対応を追加
新型コロナウイルスの感染者が発生した場合、クラスターの発生の有無を把握するため各自治体が濃厚接触者の特定や行動調査を行っていましたが、2021年1月8日に「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査要領」が改訂され、地域で患者が急増する状況における調査対象者の優先順位の考え方が定められました。
保健所が優先順位に基づき、事業所の調査を行わない場合があるため、事業者の責任で「濃厚接触者」を特定し、自宅待機をさせる必要が生じています。
そこで、事業者が「濃厚接触者」に相当する者を特定、必要な対応をとる方法について、以下のように追記しています。
【必要な対応】
・ 患者の感染性を有する期間(a)に「濃厚接触者」(b)に相当する者がいないかを調査する
(a)患者の発生日から2日前(無症状場合は検査日から2日前)以降
(b)患者と長時間の接触があった者、近距離(1m程度)で患者と15分以上の接触があった者など、事業者の責任で「濃厚接触者」に相当する者を決定する
・ 「濃厚接触者」に相当する者に対しては、患者との最終接触日から14日間の自宅待機が必要なことを説明する。自宅待機中に発熱などの症状を認めた場合には、自治体の相談窓口や医療機関に相談するよう指示を行う
民間のPCR検査、無症状者に対するPCR検査
検査の精度管理に関する注意喚起が必要になったため、「自費検査(民間検査)の課題」を追加
第4波のピークが見えない中で、感染拡大に伴い、民間のPCR検査センターは全国的に依頼が殺到しているといいます。
また、「産業保健新聞」を運営するドクタートラストにも、企業から「会社として自費検査を行うことを考えている」とお声をいただくことが増えています。
自費検査は容易かつ簡便ではありますが、医師不在の検査機関があったり、検査の精度管理が明確でないという問題点もあるので、更新された「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」では、自費検査のメリットとデメリットがまとめられています。
メリット | デメリット |
・ インターネットなどでも検査予約ができる ・ 自宅などでも検査を受けられる ・ 費用が比較的安価である ・ 検査結果の入手が容易である | ・ 検体を自分で郵送する場合がある ・ 診断まで受けられない場合がある ・ 検査体制・精度管理が明らかでない ・ 検体採取の適切さの問題 |
医療機関で検査を受けない場合には、検査結果が陽性となった場合でも、診断を受けることができません。
事業所での自費検査は、上記の点を認識したうえで実施しましょう。
「無症状者に対するPCR検査」を追加
事業所で感染者が発生した場合、事業所では濃厚接触者を特定することとなります。
一方で、特定した濃厚接触者が「無症状」であった場合、どのタイミングでPCR検査をするべきなのか、疑問に思う方も多いでしょう。
更新された「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」では、検査のタイミングに関して解説する情報が少ないため、無症状者のPCR検査実施のタイミングが追加されました。
【無症状者のPCR検査実施のタイミング】
・ 陽性者との接触直後の場合、PCR検査が陰性と出やすいことがあるため、最終接触後に速やかに1回目のPCR検査を行い、最終接触後5日から7日の間に2回目のPCR検査を受けることを推奨する
⇒1回目のPCR検査は「未感染であることを確認する」検査。2回目の検査は、潜伏期の中央値が5日程度のため「感染の有無を確認する」検査
・ PCR検査が陰性であっても最終接触日から14日間の自宅待機が必要
「熱中症予防対策と新型コロナウイルス感染症対策の両立」を追加
2020年の夏は、外出自粛やマスク着用により熱中症予防への意識が高まったためか、熱中症の緊急搬送数は2019年とくらべ2,000人減少したといわれています。
また、マスクの着用による息苦しさ改善のため、マスクの代わりにフェイスシールドやマウスシールドを使う方も増えました。
そのような中、2020年夏の反省を踏まえ、2021年夏に向けた取り組みが追加されました。
【要点】
◎ 夏を迎える前に産業保健職や職場管理者による、新型コロナウイルス対策を考慮した熱中症予防教育を行う
◎ フェイスシールドやマウスシールドは各種マスクとくらべ飛沫吐き出し防止効果が低く、飛沫吸い込み予防効果に至ってはないに等しいことがわかっているため、適切なマスクを使用する
◎ 2021年の夏には、新型コロナウイルスの従来株から感染力の強い変異株に置き換わり、市中に蔓延していることが予想されるため、発熱や倦怠感などの熱中症の症状と区別がつかない症状には注意する
◎ 熱中症リスクのある職場を抱える事業所は、夏場は休憩が増えることを念頭に、休憩室、更衣室や食事場所の換気や相互距離はどうか、いわゆる「3つの密」(密閉、密集、密接)の回避状況をよく確認し、必要な改善を行っていく
その他、新たに国内のワクチン接種の開始に伴い、ワクチン接種による予防に関する事項や、「まん延防止等重点措置」に関しても追加されています。
依然として感染が収まる気配がない新型コロナウイルス感染症、社内から感染者や濃厚接触者、体調不良者が発生した際に、焦らず対応できるよう、引き続き最新の情報を確認しながら、制度を整えていきましょう。
<参考>
一般社団法人日本渡航医学会、公益社団法人日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第5版」