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知っていますか? 骨髄ドナーの支援制度
- 2020/10/27
- ドクタートラストニュース
水泳の池江璃花子選手が白血病を公表したときにドナー登録者が増えた、という報道を覚えている人も多いのではないでしょうか。
白血病など血液の病気の治療には、骨髄移植や末梢血幹細胞移植があります。
この治療法には、骨髄・末梢血幹細胞を提供してくれるドナーが必要です。
現在、新型コロナ感染症の影響で、骨髄バンクへのドナー登録者数が減少しているという異例の事態にもなっています。
10月は骨髄バンク推進月間です。
今回はあらためて骨髄バンクのドナー、そして支援制度をわかりやすく解説します。
ドナー制度とは?
白血球にはHLA型という型があり、組み合わせは数万通りも存在しています。
骨髄移植や末梢血幹細胞移植を受けるうえでは、提供する方と移植を受ける方のHLA型が適合している必要があるものの、その確率は兄弟姉妹間で4分の1、非血縁者間になると数百~数万分の1と極めて低いため、近親に適合者がいない場合、独力で探すのは至難の業。
そこで、より多くの患者さんにHLA型の適合するドナーが見つかるようにするため、行われているのが骨髄バンク事業です。
公益財団法人日本骨髄バンクが主体となり、骨髄・末梢血幹細胞を提供する意思がある人たちにドナー候補者として骨髄バンクに登録してもらい、患者さんとの間で公平に移植のあっせん(コーディネート)などを行っています。
<ドナー登録できる方の主な条件>
・ 骨髄・末消血管細胞の提供内容を十分に理解している、20歳以上55歳以下の健康な方
・ 体重が男性45㎏以上、女性40㎏以上の方
<ドナーの登録の方法>
・ ドナー登録を読んで内容・登録条件を確認
・ 献血ルーム等の登録窓口で登録申込書に記入、2mlの採血をして白血球の検査を行う
・ ドナー登録後、ドナーカードを受領
・ 後日日本赤十字社から登録確認書が送られてきたら、登録完了
登録後は最終同意までいつでも取り消し・保留できます。
筆者自身、2年前に献血に行ったときにドナーの話を聞いて、登録を行いました。
ドナー登録は「2mlでできるボランティア」です。
ぜひ、まずは骨髄ドナーの登録を受け付けているお近くの献血ルームへ!
また、東京都福祉保健局ではドナー制度をわかりやすくまとめたポスターを作成しています。
制度周知のため、社内掲示などにご活用ください。
東京都福井初見局「知っていますか!? 骨髄ドナーのこと」
ドナーを支える制度
市区町村のドナー支援事業
ドナーとドナーの勤務先に対して助成を行っている自治体があります。
たとえば東京都渋谷区では「骨髄移植ドナー支援事業」として、ドナーに対して1日あたり2万円、勤務先企業に対して1日あたり1万円を交付しています。
市区町村によって対象や金額等が異なりますので、お住いの市区町村のホームページを確認してみてください。
企業のドナー休暇制度
ドナーからの提供を待っている患者さんは年間2,000人以上います。
このうち多くの患者さんは自分に適合するドナー候補者を見つけることができる一方で、候補者に選ばれたドナーのうち6割は最終的に提供を辞退しています。
実際にドナーとして提供するにあたっては外来受診や入院のために合計10日ほどを要し、長期の休暇を取得することになるものの、会社の理解が得られないためです。
こうした状況でドナーの心理的、肉体的負担を軽減するのに役立つのが「ドナー休暇制度」です。
「ドナー休暇制度」とは、通常の有給休暇とは別に外来受診や入院のための休日を特別休暇として認める制度で、「産業保健新聞」を運営するドクタートラストでも制度として設けています。
命を救うぜひ多くの企業に導入していただきたいと思っています。
末梢血幹細胞移植を受けた人の声
「産業保健新聞」を運営するドクタートラストには、実際に、末梢血幹細胞移植を受けた者がいます。
最後に本人からのコメントをご紹介します。
私は、京都の20代女性がドナー登録してくれていて、HLAの型がマッチしたことから末梢血幹細胞移植を行い命を助けられました。
末梢血幹細胞移植と聞くと、恐ろしい手術のような印象ですが、実際には、約5日間病院に入院し、注射針で腕から採血を行い、300cc程度の造血幹細胞を血液から分離し採取するというもので、採血していない間は本を読んだり、自由に過ごせます。
この方式は骨髄移植にくらべると痛みもなく、ドナーに負担がかからない術式で、5年生存率も骨髄移植とほぼ同等レベルにまで改善し、昨今では血液がん治療の主流になってきています。
HLAの型は、過去にどのような病気と闘い克服してきたかという祖先からの遺伝子情報であり、人種やどこに住んでいたかなどによって、その型は大きく異なります。
このため家族以外の人と一致することは極めて稀であり、ドナーが見つからず、命を落とす人が多いのです。
命を救う唯一の方法であるドナー登録は、できるだけ多くの人がしてくれることがとても重要です。
なお、ドナー登録した結果、病院が運営するボランティア団体から末梢血幹細胞の提供依頼が来た場合、仕事の都合や両親が反対している等の理由で断るケースが多く、実際に私も入院の3日前に最初のドナーは断られています。
後から断ることも可能ですので、まず登録をしていただければと願うばかりです。