長時間労働の削減に向けて ~事業主と労働者にとっての「労働時間」~
- 2020/2/28
- 働き方改革
まず初めに
2019年4月に一部施行された「働き方改革」について、言葉だけは日常において耳に入ってくる機会も増えたかと思います。
多くの事業所では、その取り組みに着手し、組織改革をスタートした年となっていますが、2020年がスタートした今の現状をみると、まだまだ言葉先行の事業所も多いようです。
日々の忙しい業務の中で、事業所内だけで理解するには難しい事項も多いと思います。
その中でも大きな取り組みの柱の1つである長時間労働を考えるにあたり、事業主と労働者にとっての「労働時間」について書かせていただきます。
労働時間について
厚生労働省では、平成29年1月20日に策定したガイドラインにより、労働時間の適正な把握について明確にしています。
・ 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間
・ 業務上義務づけられた研修・教育訓練
大きくこのような時間を、使用者は適正に把握する責務があるとしています。
出社して行うことはすべて労働時間であり休日に出社して行う研修も労働時間と考えていいでしょう。
働き方改革を考えるにあたって、この基本の労働時間を踏まえていないと、長時間労働に対する対応が難しくなってきますね。
しかし、たとえば「同僚の残業のかたわらお茶を飲みながらスマートフォンを片手に終了を待つ」といった状況まで労働時間と捉えられては、企業側と労働者側にとって非常にアンフェアなことになってしまいます。
それを防ぐためにも、労働時間の適正な把握のための措置が指定されています。
労働時間の把握について
使用者は、単純に1日何時間働いたかを把握するのではなく、毎日の労働日ごとに始業と終業の時刻を確認して記録を行い、何時間の労働時間であったかを把握し確定する必要があります。
確認と記録の原則は、
・ 使用者が実際に確認して記録すること
・ タイムカードやICカードでの客観的な記録を使って確認し記録する
としています。
そして、労働者の自己申告です。
ここが1つポイントだと思います。
※「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)より抜粋
上記抜粋に何度か記載のある「労働者に対して十分に説明する」ということ…。
これは、労働時間として申告した場合には賃金が発生するので、労働者側も自覚を持ってもらうために十分説明しましょう、ということです。
さらに、企業側も申告した時間と、実際の労働時間を確認する必要があり、労働者への過大評価や過小評価にならないよう適正な評価をする必要があります。
(補足)
使用者とは、イメージで考えると社長かな?と思う方も多いと思います。
もちろん正しいのですが、労働条件の決定や労務管理の実施などに関して、一定の権限を持っている人のことで部長、課長などの中間管理職の方でも対象になります。
なぜ労働時間の管理が必要か
「働き方改革」のなかの長時間労働の是正の根本には、日本が迎える少子高齢化・労働力人口の減少があると考えます。
世界的に見て日本の生産性は低いなどのニュースもよく耳に入りますね。
今後、企業において生産性の向上に取り組むことが必要になってくる……この流れは避けられません。
労働者個人も自分の限られた労働時間とその内容を考え、自分の強みと弱みを再確認する。
企業側としても無駄な労働がないかを明確にし、仕事内容を分析し効率を考える。
お互いがブラッシュアップすることで、生産性の向上につなげると言うのが、働き方改革に対する前向きな取り組みではないでしょうか。