「環境基準79倍」のベンゼンって、どれくらい危険?

築地市場の移転先となる豊洲市場の地下水モニタリング調査で、最大で環境基準の79倍となるベンゼンが検出されたことが話題となっています。

「79倍なんて、とんでもない数値だ!」

そう思われる方も多くいらっしゃるかもしれませんが、そもそもベンゼンとは人体に対してどのような影響を与えるのでしょうか。

そもそもベンゼンとは

ベンゼンは多くの場合、石油から作られます。
常温では液体ですが、揮発性が高いため、蒸気となりやすく、呼吸を通じて体内に吸収、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
医薬・染料・香料・爆薬などの合成原料として広く使用されていますが、ベンゼン中毒が世界で多発したため、各国でその使用が厳しく規制されるようになりました。

ベンゼン中毒とは?

急性中毒としては、麻酔症状が挙げられます。
高濃度のベンゼン蒸気を吸入すると、最初に頭痛、めまいが起こり、酒に酔ったような興奮状態となり、やがて眠気、運動失調、呼吸困難をきたし、こん睡状態に陥り、死亡する場合もあります。
慢性中毒としては、低濃度の蒸気の吸入あるいは皮膚からの吸収によって起こり、食欲不振、体重減少、倦怠感、頭痛やめまい、不眠などの症状がでます。
また、造血機能が障害されて、貧血、白血球減少が見られ、白血病再生不良性貧血になることもあります。

”79倍”とはどれくらい危ないのか?

「環境基準の79倍」と聞けば、とてつもなく高い数値に聞こえます。

まず、今回話題になっている地下水の水質の環境基準値とは「1日2Lの地下水を70年飲み続けても健康に有害な影響がない濃度」であり、具体的には0.01mg/Lです。
豊洲の地下水からはその79倍、つまり0.79mg/Lという濃度のベンゼンが検出されたわけですが、
1997年の日本中毒情報センターの報告によれば、以下のようになります。

  •  ヒトの致死量 経口で50mg/kg~194mg/kgで死亡報告あり
  •  ヒト最少中毒発現量 130mg/kg

したがって、体重70kgのヒトであれば、9100mgの摂取、つまり、11,519Lの地下水を飲んだ場合にベンゼン中毒を発症するということになります。
さすがにこれは極端な話だと思いますが、ある大学教授によると「飲むわけではなく人体に影響はない」との意見もあります。
豊洲市場の移転問題は未だ先が見えませんが、食品を取り扱う以上、不安視する声が多いのも当然といえるでしょう。

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