「依存症」、治すことはできるのか?
- 2016/12/10
- メンタルヘルス
テレビを騒がすことの多い、有名人の薬物依存。
他人事だと思っていませんか?
依存症のうち、一般的に耳にすることが多いのは以下のものです。
・ 薬物依存
・ アルコール依存
・ ギャンブル依存
他にも、恋愛依存、買い物依存、性依存、ニコチン依存……。
現代らしく、ネット依存や携帯依存と呼ばれるものもあります。
男性はアルコールやギャンブルにはまりやすく、女性は買い物や恋愛依存が多い傾向にあります。
依存の種類
依存症には、「依存」になるメカニズムがあります。
・物質への依存 服用したり注射で体内に取り込むことで刺激や快楽を得ることを覚え、その物質に執着する。
例:アルコール、ニコチン、薬物
・プロセスに対する依存 何かをすること、その過程で得られる刺激や興奮を求めてその行為自体に執着する。
例:ギャンブル、パチンコ、買い物
・関係性の依存 特定の相手が存在すること、その人との歪んだ関係性に執着する。
例:恋愛依存、親子の依存、共依存
また、以下のような特徴があります。
・やらずにはいられない(強迫的)
・やめられなくて繰り返す(反復的)
・思いついたらすぐに行動(衝動的)
・拘り、執拗に追う(貪欲的)
依存症の場合は「ほどほど」という距離感が保てず「とことんのめりこむ」のが特徴です。
精神医療の現場では、アルコール依存を説明する際に「ブレーキが壊れた車」と表現されます。
アルコール依存の場合は、「今日は1杯だけ」「ここまでで止めておく」ができません。
飲み過ぎて仕事に行けなくても、お酒を飲むために借金をしても、自分を止めることができません。
一滴でもお酒を口にしたら最後、正体不明となり意識を失って潰れるまで飲み続けます。
まさに、止めるところが分からない、止めることを知らない「ブレーキが壊れてしまっている」のです。
心のバランス
なぜそこまでのめり込むのかは、その人の心の状態が大きくかかわってきます。
・ 常に強いストレスを抱えている。
・ 自分は孤独だと感じる
・ 劣等感が強い
・ 信頼を置ける相手がいない
・ 何をしても満足ができない
このように、心が常に飢餓状態あると、現実から目を背けるために、アルコールやギャンブルに走る傾向にあります。
また、自分と特定の相手との関係性に過剰に依存することへとつながります。
「自分がいないとダメ」と他人から頼られることで、自己の存在価値を見出す側と他人に頼ることで相手をコントロールし、自分の思い通りに行動させる側との間でのバランスが共依存を生み出します。
否認の病理
依存症の人は、自身の状態、病態を認めません。
本人は、意外にも「止めれば大丈夫」「いつでもやめられる」、そう思っています。
しかし、「コントロールすることができないことが病気」なのです。
既に社会生活や金銭的な破たん状態に陥っていても、その事実を認めません。
これを「否認」と呼びます。現実を認める勇気が持てないのです。
そのため、傍から見ると「認めない、逃避、意志が弱い、無責任」というイメージがつきやすくなりますが、実は、むしろ、真面目すぎる人や仕事熱心な人が多く陥る病です。
アルコールを飲んで周囲に迷惑をかけている姿は、「お酒」がその人をそうしているに過ぎません。
誰もがかかり得る「病気」である
依存症は、誰でもかかり得る病気です。
また、一人で治すことは非常に困難な病です。
閉ざされた病棟で依存物質から物理的な距離を取るだけでは、治療は困難です。
鍵のかかった病棟に閉じ込められて治療をしても、退院すればすべてもとに戻ってしまいます。
自由に出入りのできる環境で依存物質が「手を伸ばせば届くかもしれない」環境下で治療するほうが、自身の理性と治療意欲から欲求を「抑制」することにつながり、効果があるといわれています。
心の病気ではあるものの、関係性と物質への抗いを生涯続ける病が「依存」ですが、適切な治療と周囲のサポートにより、社会生活を取り戻すことのできる病気です。
お酒を飲む機会が増える季節ですが、お酒とはほどほどに付き合うよう心がけたいものです。