メンタル休職からの復職~成功の鍵とは~
- 2017/6/24
- メンタルヘルス
厚生労働省の発表によると、平成27年度に精神不調で労災請求した人の数は1,515件。
脳・心臓疾患による労災請求件数の795件に比べて2倍近い件数となっています。
また、メンタルヘルス不調により、1か月以上休業した労働者の割合は0.4%。
退職した労働者の割合は0.2%となっています。
病気により休職し、そのまま離職してしまうことは、本人にとっても事業場においても痛手となります。
病気休職でいったん職場を離れたあと、会社に戻るには、事業場も本人も戻るための準備を必要とします。
本人からの「主治医の許可が出たので、明日から出勤します」という申出だけでは復帰は容易ではありません。
復帰のための基本は朝方の生活リズム
「通常の通勤時間帯に、公共交通機関で出勤ができるか」
これは最も基本的で大切な目安です。
以前は「うつ病の人は午前中の調子が悪い」ために「午後からの出勤を促す」ことが提案されていましたが、「症状が緩和された時間帯に出勤する」というのは、本来の勤務時間に出勤することが可能かどうかの判断につながるとはいえません。
自宅療養していた生活リズムから「本来の出勤時間に」「休職前と同じ交通手段」を使って出勤する生活習慣に切り替える必要があります。
事業場は、これまでの業務が継続可能か、配置換えを検討したほうがいいのか、産業医とも相談し、復帰時の受け入れ態勢を整えます。
休職していた本人は、主治医の診断書を用意し、当面の通院頻度など、会社に伝えるべき内容を整理します。
精神科の薬を服用している期間は、業務から車の運転を外してもらうなど、復帰に向けた主治医の意見も隠さず伝えます。
リワークという方法
復職可能とはいっても、急に出勤して仕事をするのには抵抗や不安が多い場合、準備期間中にリハビリを行うことも可能です。
自宅療養と復職の間に認知行動療法に基づいた、「リワーク」というリハビリプログラムを挟むことでスムーズな職場復帰を目指します。
【リワークプログラムの内容】
・オフィスワーク:作業療法士などと一緒に、短時間で集中して取り組むプログラムを行います。
・セルフケア:ストレスへの理解を深め、自己表現方法、考え方の癖など対処方法を身につけます。
・グループワーク:課題についてのロールプレイやミーティングを行い、対人コミュニケーションに慣れていきます。
通院先の医療機関で「リワーク」をしている場合は、復帰前に参加しやすいでしょう。
また、通院先になくとも「リワーク」のみ利用することも可能です。
心当たりのない方は、以下の場所でもリワークを行っています。相談してみてはいかがでしょうか。
【東京障害者職業センター】
■上野本所 東京都台東区元浅草3-18-10上野NSビル7F
■リワークセンター東京 東京都立川市曙町2-38-5 立川ビジネスセンタービル5F
安心して復帰するために
復職者は症状の悪化や、職場に本当に戻れるか大きな不安を抱えています。
また、事業場もどれくらいの回復をしているのか、対応の仕方について不安を抱えています。
貴重なプレイヤーである従業員を復帰させるにあたり「ルール」を定めましょう。
双方の不安を解消するには、復帰前の準備として、診断書の提出はもちろんですが、本人に産業医との面談を受けさせる、また、主治医への通院日に本人の許可を得て診察に同席し、主治医からのアドバイスをもらうことも一つの方法です。
復職者へは上司や先輩などが目をかけながらも、チーム全体で見守りましょう。本人は「大丈夫な姿を見せよう」と無理をし過ぎる側面がありますが、無理をしそうな時は「ルール」を元に、周囲が抑制することも必要となります。
休職後にそのまま退職となるのは、企業にとっても大きな痛手です。
事業場をよく知る貴重なプレイヤーの力を再度発揮できる舞台を整えて、安心して復職できる職場づくりに努めてみませんか。
<参考>
厚生労働省「平成27年度「過労死等の労災補償状況」を公表」
厚生労働省「平成27年 労働安全衛生調査(実態調査)」