ストレスが限界を超えたことによるメンタル不調

それは突然起こった

いつもと変わらない出勤。
徒歩で20分の距離。
あと5分でオフィスに到着、という時に頬が濡れた。
空が曇っているから、雨でも降って来たのかと思い、少し早く歩を進める。
何かおかしいと感じるまで、そう時間はかからなかった。
地面は濡れてないし、周りの人たちも雨が降った時の反応ではない。自分の服も濡れていない。
なぜ頬が濡れたのか。
自分が泣いていたからだった。
なぜ……。
目から涙がでている意味が分からない。しかも、号泣に近い状態。
特に感情が高揚するようなことを考えていた訳ではなく、いつも通り仕事の段取りなどを考えながら歩いていた。
混乱はしていたが、とにかく涙を止めないといけない。
そう思った時に、オフィスのあるビルに着いた。
このビルには知った顔も少なくない。
朝から涙を流している顔を見られては、何かと不都合があるような気がしたが、涙は止まらない。
ハンカチで目頭を押さえてエレベーターに乗り込んだ。
幸い同乗者はいない。
誰にも会わず、オフィスに到着した。
オフィスのドアを開けようとする手がとまる。
自分がなぜドアを開けようとしているのか、それがわからなくなった。
ここで、思考が停止した。
時間にして1分くらいだと思うが、体も止まってしまっていた。
そのあとは、「我に帰る」という言葉がまさに当てはまる。
涙も止まっていたので、トイレで顔を洗っていつも通りにオフィスのドアを開けた。
停止していた1分くらいは、涙が出ていること以上に、何が起こったのか理解できない状態で、いきなり世界がすべてなくなったようだった。
それ以降、仕事のモチベーションは明らかに落ち、そのことが気になり眠れない日が続いた。
睡眠導入剤でも思ったような効果を得られず、結局アルコールに頼ってしまい、体調もすぐれない状態が続いた。

ーーー以上が、久しぶりに会った昔の職場の後輩から聞いた、メンタル不調とおぼしき状態になった時の彼の状況です。

ストレスが限界値を超えることの恐怖

さて、ストレスは水を貯める容器に例えられることがあります。
容器の容量は、その人が溜め込むことができるストレスの容量で、それを越えてしまうと、さまざまな変化が起こります。
彼もそういった状態にあったと想定されます。
おそらく、出勤中にストレスが許容範囲を越えてしまったのではないでしょうか。
結局、彼は数か月後にその時の職場を退職し、3ヶ月ほどの休養期間を経て、現在は別の会社で活躍しています。
また、彼の退職した会社にはメンタルヘルス相談窓口のようなものもあったようですが、特に相談はしていないと言っていました。
「だって、相談したって意味がないでしょ。自分の体調の不調を会社に訴えたところで、立場を悪くするだけじゃないですか?」ということです。

従業員のメンタルヘルスは企業の義務でもある

彼は、職場は変われど会社復帰できましたが、一般的には、メンタル不調から復帰できないケースが少なくないことも事実です。
ストレスの許容量は人によって違うし、いつ容量を越えてしまうかはわからないもの。
企業は、従業員に正しいストレスの知識を教育して、従業員がストレス過多にならないように努めることも大切ですし、もしストレスから体調を崩す従業員がでた際には、充分な対応ができる体制を作っておかなければいけません。
たとえば彼が、その企業で指折りの営業パーソンであった場合を想定すると、
突然の不調と退職は、かなりの損害を与えてしまうことも想像できますし、会社の業務に起因するメンタル不調であった場合には、企業は安全配慮義務違反に問われる可能性も否定はできないのです。

企業を守り、損失を防ぐといった意味でも、メンタル不調者が出てから対応するのではなく、不調者がいない状況であっても事前に、体制をつくっておく必要があるのです。

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