ストレスチェック制度が義務化され、半年以上が経過しました。
既に受検が終了し、医師の面接指導や労働基準監督署への報告書作成へと進んでいる企業も多いことでしょう。
「効果はない」という医師が6割以上
ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」と位置付けられていますが、その効果について、医師たちはどのように考えているのでしょうか。
このほど、医師10万人以上(国内医師の3人に1人)が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」(https://medpeer.jp)は、会員医師を対象とし、ストレスチェック制度に関するアンケートを実施しました。
さて、気になる結果ですが・・・
対象4,031人のうち、最も多かった回答は「どちらかと言えば効果はない」(45.3%)でした。
「まったく効果はない」(16.8%)と合わせると、6割以上の医師が「効果はない」と捉えていることになりますね。
しかし一方、2番目に多い回答は「どちらかと言えば効果がある」(35.6%)でした。
”とりあえずやってみた”で終わらせないために
半数以上が「効果はない」、と手厳しい評価となった今回の結果ですが、医師たちからは以下のようなコメントが得られています。(一部抜粋)
・ストレスチェック後の職場改善の対策が無い限り、一次予防にはならない。
・高ストレス判定の中でも、面談を申し込んだほうがよさそうな人が申し込んでこない。
・本当にうつ状態で悩んでいる人よりも、職場に不満のある人が引っかかる印象がある。
・医師主導でやる分には効果はありません。しっかりと人事部幹部にその意味を叩き込んで、責任を持たせ、社長にその意味を分かってもらうようにすれば一次予防の効果は出るでしょう。
実施後の集団分析については、制度上努力義務となっていることから、まずは実施までをマストとしている企業もあるでしょう。
ですが、本人へのストレスに対する気付きを促すことはできても、環境改善が図られないと、元となるストレス要因が解決されないケースも多いのではないでしょうか。
面接指導の申出状況を考える
また、既にストレスチェックが終了し、医師の面接指導を行っている企業では、その申出者はどのくらいいたでしょうか?
「高ストレス者の割合は多かったみたいだけど、申出者はほとんどいなかった」
「面接指導の申出者が多くって・・うちの会社って他社と比べたら異常なんじゃないか??」
申出期間等それぞれの環境にもよりますが、前者については、申出者がいなかった=深刻な高ストレス者はいなかった、とは一概には言い切れません。
「面接の希望を出すことで、処遇に影響が出たらどうしよう」等、不利益に対する不安から申出がしづらい環境や、そもそも社内での産業医に対する認知度が低いために、面接申出まで繋がらないケース等も考えられるからです。
逆に、後者の場合はいかがでしょうか。
面接指導の申出者が多い=深刻な高ストレスだらけ・・・でしょうか?
実際、面接の申出担当の方からすると、多数の申込みがあると一瞬どきっとしてしまうかもしれません。
ですが、日頃、産業保健スタッフと従業員の関係が良好に築けている場合は、
「高ストレスの通知が来たーー自分ではどうしていいか分からないから、ひとまず産業医の先生に相談してみようかな」
というラインが確立されているからこその場合もあるのです。
また、産業保健スタッフが常駐している企業では、申出窓口を看護師・保健師といった産業保健スタッフが担当しているところもあるでしょう。
その場合、人事・総務担当を通さずに面接希望が出せる点で、安心感を持てるという利点もあるかもしれません。
「効果がある」と答えた医師の意見
最後に、一次予防に効果ありと回答した医師の意見も紹介したいと思います。
・ストレスチェック自体の効果ではなく、ストレスチェックを行うことでの本人自身や管理者に対する啓蒙を促す効果はあると思う。
・メンタルヘルス対策をまったく実施してこなかった事業所や従業員に、意識を少しでももってもらうということではいくらか意味がある。
・これによって救われる労働者も少なからずいるはず。
実施して終わり、ではもったいないストレスチェック。
それぞれに今回の結果をいかに活用し、社内のメンタルヘルス対策にどのように繋げていくか、
産業保健スタッフと意見交換していくことをおすすめします。
[調査概要]
・調査期間:2016/8/3~2016/8/9
・有効回答:4,031人
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:MedPeerに会員登録をする医師