従業員の健康管理は会社の責任?企業ができる6つの取り組み

長時間労働による労災が問題となっている現代において、従業員の健康管理は会社が負うべき非常に重要な責任のひとつです。まだまだ個人の問題とされてしまいがちな従業員の健康管理ですが、企業全体として取り組むことで、一人ひとりの健康維持・増進だけでなく、職場環境の改善や業務効率化につながり、生産性向上も期待できます。

この記事では、企業が取り組むべき従業員の健康管理について解説します。

目次

従業員の健康管理は会社の責任?

会社は従業員に対して、安全で健康に働ける環境を用意しなくてはいけません。これは、2008年施行の労働契約法で明文化された「安全配慮義務」を根拠としています。

(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出所:労働契約法

つまり、心身の健康を害するような長時間労働、劣悪な職場環境などを放置して、従業員の健康管理を怠るのは安全配慮義務違反にあたります。労働契約法自体に罰則規定はありません。

しかし、安全配慮義務違反の企業で労災が発生した場合、その程度にもよりますが、多額の賠償金が発生する事態は避けられないでしょう。

企業に求められる「安全配慮義務」とは?

企業に求められる安全配慮義務には、具体的に4つのポイントがあります。

  • ■ 適正労働条件措置義務
  • ■ 健康管理義務
  • ■ 適正労働配置義務
  • ■ 看護・治療義務

適正労働条件措置義務

適正労働条件措置義務は、従業員が長時間労働で健康を害することのないよう、労働時間や休憩時間・場所、休日、人員配置などを適正に保つ義務です。残業の時間なども的確に把握し管理していく必要があるでしょう。

健康管理義務

健康管理義務は、労働者の健康管理をするために健康診断やストレスチェックを行う義務です。生活習慣病や精神疾患などは、長期の休職につながりやすいため、健康診断や保健指導、ストレスチェックなどを実施して、不調を発症する前に予防していく管理が会社に求められます。

そのほかには、それぞれ病歴や持病、体調を考慮した配置を求めた適正労働配置義務や、けが人や病人への対応を義務づけた看護治療義務などがあります。

今、従業員の健康管理が注目される背景とは

従業員の健康管理が注目されている背景として、業務の複雑化や業務量の増加などを理由として精神障害による労災件数が右肩上がりで増加している状況があります。

厚生労働省が2023年に発表した「精神障害の労災補償状況」によると、2022年度の精神障害による労災請求件数は2,683件となっており、計測開始からの過去最大件数を更新しています。

少子高齢化が進み、労働者人口が減少している日本にとって、働き手が精神障害などで働けない状況に追い込まれてしまうことは大きな痛手であり、各企業においても健康管理の重要性が高まっています。 また、労働人口の減少から従業員の健康管理を経営的な視点で捉える「健康経営」が注目されていることも理由のひとつにあげられるでしょう。

健康管理のために企業ができる取り組み 

具体的に企業が行う従業員の健康管理にはどのようなものがあるのでしょうか。

①労働時間の適正化

もし、長時間の時間外労働や休日出勤が常態化しているのであれば、従業員の労働時間の適正化を行いましょう。時間外労働については以下のポイントを守る必要があります。

  • ■ 時間外労働は月45時間、年360時間を超えてはならない
  • ■ 労働者側と合意した場合でも、年に720時間以内の時間外労働を超えてはならない
  • ■ 労働者側と合意した場合でも、休日出勤を含めた時間外労働は月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内にしなくてはならない
  • ■ 月45時間を超えて残業できるのは年に6ヶ月まで

たとえ上記のポイントを守っていたとしても、従業員に不調の様子が見られれば、産業医による面談などを実施しましょう。

②健康診断やストレスチェックの実施

健康診断とストレスチェックの実施は労働安全衛生法で定められた会社の義務です。

(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

出所:労働安全衛生法

健康診断は実施するだけでなく、事後措置が重要です。所見のあった従業員に再検査を促したり、生活習慣病のリスクがある場合には保健師による保健指導を行ったりすることで、将来の休職や退職のリスク低減が期待できます。

ストレスチェックに関しては従業員数50人以上の事業場でのみ義務となっています。

しかし、メンタルへルス対策において非常に効果的であり、集団分析をあわせて実施することで、後述する職場環境改善につなげていくことが可能です。

③職場環境の整備

従業員の健康管理において職場環境の整備は非常に大切です。オフィスの気温や明るさの調整、作業・休憩スペースの確保など、従業員が健康的に働ける職場環境を用意することで、労災のリスクを抑えることができるでしょう。

ウォーキングイベントなどの実施や社員食堂のメニュー改善、健康管理アプリの導入などの施策も有効です。

また、職場環境は目に見えるものだけではありません。同僚・上司との関係や業務量、裁量権の有無なども職場環境には含まれます。

ストレスチェック結果から集団分析を行うことで、人間関係や仕事内容への不満など、目に見えない職場環境の問題点を明らかにできるため、効果的な改善策の実施が可能です。

④福利厚生の充実

福利厚生を充実させることで、従業員の健康維持やストレス軽減の効果が見込めます。

たとえば、スポーツジムや社員食堂の補助は、従業員の健康管理において、非常に有効な福利厚生です。社内独自の休暇の導入による疲労蓄積の防止や、社内イベントによってコミュニケーションの機会の創設、住宅手当などによる通勤負担の軽減など、福利厚生の充実は従業員の健康管理に直結します。

⑤研修やセミナーの実施

社内研修や専門家を招いてのセミナーなどを実施することで、従業員自身の健康意識向上が図れます。禁煙や食生活改善に関する研修などを行えば、健康に関する正しい知識を得ることができるため、自身の生活をあらためるきっかけになるでしょう。

また、上司に対してラインケア研修を行うのも有効です。部下の「いつもと違う」様子にいち早く上司が気づき、適切な対応をすることで、メンタルヘルス不調の重篤化を防止できるでしょう。

⑥相談窓口の設置

相談窓口の設置は、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行によって、すべての会社において義務となっています。

パワハラ以外にも、自身の健康不安やメンタルヘルス不調、職場環境の問題などを相談できる窓口を設置することで、従業員の安心感につながります。 また、社内の人間には相談しにくい内容の相談も救い上げられるよう、外部相談窓口も用意しておくのも効果的です。

従業員の健康管理で得られるメリット

会社として従業員の健康管理に注力することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

リスクの軽減

従業員の健康管理は、休職や退職のリスクマネジメントになります。長期の休職や退職が起こると、新たな人材確保や教育を行う必要があるため、資金的にも時間的にも多くのコストがかかります。

健康管理によって生活習慣病やメンタルヘルス不調の予防を行うことで、休職や退職のリスクを軽減し、コストの削減と業績の向上につながっていくでしょう。

生産性の向上

健康管理によって職場環境が改善することで、業務の効率化や従業員のモチベーションにつながり、生産性が向上するでしょう。また、健康管理によって職場でのコミュニケーションやチームワーク、仕事への満足度が向上することで、社内全体の業務効率化を図れます。

さらに、疾病による休職・退職が少なくなり、就業中の不調も減ることから、良好な状態で継続的に業務へ取り組めるようになるでしょう。

人材の確保

健康管理は、人材確保の面でもメリットがあります。良好な職場環境や充実した福利厚生を受けられる点は、求職者にとって非常に魅力的です。また、健康経営優良法人を取得すれば、より効果的な求職者へのアプローチが可能になるでしょう。

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。

出所:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」

健康管理システム 「エールプラス(Ailes+)」 

会社の健康管理において、健康管理システムを使う企業が増えてきています。

健康管理システムは、健康診断やストレスチェック結果の一元管理ができるため、受診勧奨や保健指導実施を効率的に行うことが可能です。また、個人でも結果を閲覧できるようになることで、一人ひとりの健康意識の向上が期待できます。

しかし、こうしたシステムの多くは導入費用の高さや、機能の少なさなどの問題を抱えており、「多機能」かつ「低価格でだれでも使える」ものはまだまだ少ないのが現状です。

ドクタートラストが開発した健康管理システム「エールプラス(Ailes+)は、健康診断結果の管理機能やカルテ機能、疲労蓄積度チェックリスト、ストレスチェック受検・結果閲覧など、従業員の健康維持・増進に有効な機能が揃っています。

また、ウォーキングイベントなどの健康イベントも管理できるため、従業員の運動習慣づくりの手助けになります。さらに、保健師や管理栄養士、精神保健福祉士、公認心理師が作成した100本を超えるe-ラーニング動画が見放題で、楽しく健康について学べます。

「エールプラス(Ailes+)」は、産業医紹介で業界トップクラスの実績を誇り、数々の企業の健康管理に携わってきたドクタートラストが独自開発を行っており、本当に役立つ機能を低価格で提供しています。 ぜひ一度お問合せください。

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