生理前や生理中の不快症状の情報はよく耳にして知っています。
私も生理痛は感じていますが、鎮痛剤を服用したりして何とか乗り切れています。
しかし本当の悩みは生理後で、起き上がれないほどの倦怠感や動悸があり、仕事を休んでしまうことも度々です。
貧血・潜在性鉄欠乏かもしれません。
また、生理の量が多い「過多月経」の可能性もあります。
ヘモグロビンはお財布、フェリチンは銀行
血液は鉄を材料に「ヘモグロビン」を合成して作られています。
「ヘモグロビン」の値が低い状態を「貧血」と言います。
血液の材料である鉄が足りなくなると補充してくれるのが「フェリチン」です。
健診でよく耳にする「ヘモグロビン」にくらべて、「フェリチン」は耳慣れないかもしれません。
「ヘモグロビン」が普段の支払いをする「お財布」とすれば、「フェリチン」は預金をしておく「銀行」と言えます。
「ヘモグロビン」の値が正常値であれば、「貧血」と言われません。しかし「ヘモグロビン」が正常値でも「フェリチン」が低いと「潜在性鉄欠乏」の状態になり、さまざまな心身の症状が引き起こされます。
≪生理後の不調の原因①「潜在性鉄欠乏」の症状≫
- イライラ
- 集中力低下
- 神経過敏
- 朝起きれない
- たちくらみ
- 耳鳴り
- 片頭痛
- のどの違和感(つまり)
- 不妊
- 冷え性
- ニキビ
- 肌荒れ
- 節々の痛み(関節・筋肉)
- 疲労感
- レストレスレッグス(座ったり、横になっていると足がムズムズ・ピリピリしたり、痒みや痛みを感じるむずむず脚症候群)
2020年の国民健康・栄養調査(※1)によれば、日本女性のほとんどが鉄欠乏であることがわかっています。
鉄分の摂取基準推奨量は一日10.5㎎のところ、20代では6.8㎎、30代は6.8㎎、40代は7.1㎎、50代は7.6㎎、60代は8.6㎎しかとれていません。
生理中から生理後は経血と一緒に鉄分が失われてしまうため、どうしても貧血に傾きやすくなります。
平成21年の日本人男性のフェリチンの平均値が139.6であるのに対し、女性は55で、差が大きく開いています。(※2)(平成15年から国民健康・栄養調査において鉄欠乏の検査指標である血中フェリチン濃度の測定が導入され、20歳以上で鉄欠乏状態を正確に把握できるようになりましたが、平成21年で血清フェリチンの調査は終了)
その原因は生理です。 特に、出血量が多い人は注意が必要です。
経血量が多い過多月経
過多月経とは、月経量(生理の量)が異常に多い状態のことです。
一般的には一回の生理周期での出血量が150ml以上のケースを指します。
しかし、月経量を正確に把握することは難しいため、「経血が多い」「血の塊が出る」などの症状に基づいて診断されることが多いでしょう。
過多月経の結果、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、貧血がみられることも多くあります。
≪生理後の不調の原因②過多月経チェックリスト≫
□ 日中でも夜用ナプキンを使う日が3日以上ある
□ 普通のナプキン1枚では1時間持たない
□ 経血にレバーのような大きな塊が混じっている
□ 以前より経血量が増え、日数も長くなった
□ 健康診断で貧血を指摘された
過多月経はホルモンバランスの乱れによって引き起こされることがあるほか、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などの子宮の良性疾患や、まれに悪性腫瘍や血液疾患などの命に関わる病気と関連していることもあります。
当てはまる症状があったらためらわずに婦人科を受診しましょう!
「貧血」といわれたことがなくても
これまで「貧血」と言われたことがない方も注意が必要です。
なぜなら、「貧血」を判断する「ヘモグロビン」は健康診断などの血液検査でしっかり見ることが多い一方、「潜在性鉄欠乏」を見る「フェリチン」は一般的な検査項目ではないからです。
生理は周りの人とくらべることがなく、「みんなこんな感じだろう」と生理の量の多さに気づけていないことも少なくありません。
毎月の生理の度に日常生活に支障をきたすような辛い症状を抱えていては、QOL(生活の質)が下がってしまいます。
また症状の裏に大きな問題が潜んでいる場合もあります。我慢せずに、医師に相談してみましょう。
<出所元>
※1 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
※2 国立健康・栄養研究所「国民健康・栄養調査」
<参考>
・ 塩崎 宏子、泉二登志子「鉄欠乏性貧血の検査と診断」(「日本内科学会雑誌」2010年99巻6号p.1213-1219)
・ 荒木洋子、市川佳居編著『働く女性のヘルスケアガイド おさえておきたいスキルとプラクティス』(金剛出版、2022年)
・ 高尾美穂『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社、2022年)
・ 細川モモ『自分の体を守る 正しいデータを持てなかった女性たちへ 生理で知っておくべきこと』(日経BP、2021年)