「これだけ食べれば栄養を満たせる」という完全栄養食だけ食べ続けてもいいですか?
完全栄養食は、必要な栄養素をすべて満たすことができる理想的な食品ですが、3食すべてを置き換えることはおすすめしません。長期的な健康維持のためには、栄養バランスを考慮した食事を基本として、完全栄養食は日々の食事の中で上手に組み合わせて活用していきましょう。
完全栄養食とは?
人が健康を保つために必要とする栄養素が十分に含まれている食品を完全栄養食といいます。
市販されているものとして、パンやパスタ、シリアルやドリンクなどが挙げられ、種類によっても異なりますが話題となっている国内の「完全栄養食」は1食分の栄養素を含んでいるものが多いです。
栄養補助食品やサプリメントとどう違うの?
栄養補助食品やサプリメントは、食事だけでは不足しがちな栄養素を補うための食品です。
たんぱく質やビタミン、ミネラルなど特定の栄養素を豊富に含んだ食品が多く、栄養補助食品としてはバーやグミなどお菓子のように食べられるもの、サプリメントでは粉末や錠剤タイプのものが主流です。
完全栄養食のメリットは?
① 必要な栄養素を過不足なくとれる
ほとんどの国内の「完全栄養食」は厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」に沿って、1食あたりに必要な栄養素をすべて取れるように作られています。
現代人の食事は量と質に偏りがみられることが多く、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足しがちですが、完全栄養食を取ることで補うことができます。
② 自分の時間が増える
そのまま食べられるパンや粉末と液体を混ぜるだけのドリンクなど、手軽に準備して食事を済ませられるものが多いです。
栄養バランスのとれた献立を考えることや食事を準備する手間、食べる時間を圧倒的に短縮することができます。
完全栄養食のデメリットは?
① 顎の力が弱くなる
柔らかい食品(パンやパスタなど)や噛まずに取れるドリンクなどの完全栄養食は、極端にかむ力を使わないため、顎の力が弱まってしまう可能性があります。
また、私たちはかむことでストレスの軽減、集中力の向上、肥満予防、歯の病気予防、消化・吸収の促進などさまざまなメリットを受けており、かむ回数が減ることでその良い効用を期待できなくなります。
② 体調に合わせた食事が取りにくい
私たちは体が冷えるときは温かい食べ物を、また夜遅い食事は睡眠に響かないように消化の良いものを選ぶなどして、体調ににあわせて食事を取る傾向がありますが、完全栄養食ではその調整がしにくくなります。
③ エビデンスがない
完全栄養食の歴史は浅く、現時点では健康にどのように影響を与えるのかについて信憑性の高い実証データはまだありません。
必要な栄養素が満たされていても体内への吸収率が一般的な食事と異なる可能性も考えられます。
日々の食事の上手に完全栄養食を組み込む
完全栄養食は手軽に栄養素を補うことができる食品であるため、時間のない方や食事が偏りがちの方には便利な食事です。
しかし、完全栄養食だけで毎日の食事を済ませてしまうと、必要な栄養素を十分に吸収できない可能性や、噛む力が衰えるなどのリスクもあります。
また、栄養を補うことは大切ですが、食事は美味しいと感じることや、見た目を楽しむこと、誰かと同じ食事をして繋がりを感じるなど、生きる楽しみや喜びを実感する機会でもあります。
完全栄養食を利用する場合は、主食・主菜・副菜を揃えた食事を基本としながら、1日のうちの1食を完全栄養食に置き換えるなどして、忙しい日々の中で栄養バランスを整えるツールの一つとして、上手に活用することをおすすめします。
