人間ドック等の健康診断でオプションの腫瘍マーカーを申込みたいと思っています。できるだけたくさん受けたほうがいいのでしょうか。
腫瘍マーカーの検査を受ければ癌のリスクがわかるから安心だ!と考えるのは早計です。検査のメリット・デメリットを理解し、納得したうえで申し込みましょう。
健康診断などでは、受診機関によって任意でオプションをつけることが可能な場合が多く、せっかくなので申し込んでみようという方もいらっしゃると思います。今回は、その中でも「腫瘍マーカー」についてわかりやすくご説明いたします。
腫瘍マーカーとは「癌の臨床検査」であり、健康な人の癌発見に有効な検査ではない
腫瘍マーカーとは、癌の臨床検査で、血液などの体液中に放出される癌組織産生物質を検出する検査のことをいいます。
前述の質問は人間ドックを受ける社員や、がん予防の健康セミナーを開催する際に参加者からしばしば受ける質問です。
その際に筆者は以下の返答をしています。
“健常者の検診時に実施して、癌の早期発見に有効な腫瘍マーカーは現在はない”
河合忠ほか『異常値の出るメカニズム(第6版)』(医学書院、2015年)
上述のように、健康な人の検診において癌の早期発見に有効な腫瘍マーカーはありません。
理由は以下3点があげられます。
- 早期癌では陰性(検査上は数値が基準値内で癌の可能性が低いとされた状態)を示す患者さんが多いこと
- 良性の疾患でも数値が高くでる場合があること
- 喫煙する高齢男性ではCEA(※)が高くなるといった生理的な要因が関係すること
(※)CEA(がん胎児性抗原):大腸癌、肺癌、膵臓癌、胆道癌などで高くなる腫瘍マーカー
そのうえで、腫瘍マーカーを本当に受ける必要があるのか考えていただき、申し込みをするようおすすめしています。
腫瘍マーカーの検査を受けるメリット・デメリット
腫瘍マーカーの検査を受けるメリット・デメリットを考えてみます。
【表1】腫瘍マーカー検査のメリットとデメリット

上記のように、腫瘍マーカーにはメリットとデメリットがあります。
腫瘍マーカーの有効な使用方法は、 以下2つです。
- 癌患者さんの治療後の経過観察
- 再発癌の早期発見のための定期検査
まとめ
今回は人間ドックの腫瘍マーカー検査に関する質問に回答しました。
■腫瘍マーカー検査まとめ
- 健康な人の検診において癌の早期発見に有効な腫瘍マーカーはない
- 初期症状がある人には比較的有効な検査
- 腫瘍マーカー検査は単独でなくほかの検査と組み合わせて実施するのがよい
- 腫瘍マーカー検査にはメリットとデメリットがある
以上のことをよく理解し、ご自身で納得した上で検査を申し込んでくださいね。
<参考>
河合忠ほか『異常値の出るメカニズム(第6版)』(医学書院、2015年)
