健康【コラム】

始まる 「新しい生活様式」マスク使用時の熱中症対策

政府が呼びかけている「新しい生活様式」では外出時や人と会話をするときのマスク着用が推奨されています。
しかし気温が高くなるこれからの季節、マスクの着用によって熱中症になるのではないかと心配です。
どのように対策をすればいいでしょうか?

気温や湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなる可能性があります。
今年の夏はこれまで以上に熱中症対策に取り組むことが必要です。

新しい生活様式のひとつとして推奨されているのが、外出時のマスク着用です。
多くの方が着用を続けているマスクですが、暑さが増すこれからの季節、感染症だけでなくマスクによる熱中症にも注意が必要となります。

マスクと熱中症との関係について

そもそもマスクを着用することで、熱中症のリスクは上がるのでしょうか。
厚生労働省および環境省は、現時点ではマスク着用を含む新しい生活様式を進めていく上での熱中症リスクについて、科学的な知見は十分に集積されていないとしつつも、熱中症対策をこれまで以上に心がけてほしいと示しています。

皆さんもマスクを着用しているときに「暑い」「息苦しい」と感じたことがあると思いますが、これは体感だけではありません。
実際にマスクによって鼻と口を覆っているため、自分の呼吸で温められた空気がマスクの内部にこもります。
人体は汗のほか呼吸によっても体内の熱を放散しているので、マスクによって体内の熱が十分に放散できず、熱中症のリスクが上がるおそれがあります。
また、マスクによって呼吸がしづらい状態になると、呼吸をする回数が増加します。
人体は息を吐くときにも体内の水分を放出しているため、呼吸数が増えるとその分だけ水分が奪われ、熱中症のリスクが上がるおそれがあります。

また、マスクを着用していると、マスクの内部の湿度が高くなり、口や喉が乾燥しづらくなります。
感染症対策としては乾燥を防ぐことは有効ですが、乾燥しづらいせいで普段よりも喉の渇きを自覚しづらくなり、水分補給の機会が減ってしまうおそれがあります。
喉が渇いたときにだけ水分補給をする、という方は注意が必要です。

ではマスク着用はどうしたらいい?

結局のところ、マスクは着用したほうがよいのか、しないほうがよいのか、どちらなのでしょうか。
環境省と厚生労働省は「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について」の中で以下のように示しています。

夏期の気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなるおそれがあります。
このため、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクをはずすようにしましょう。

出所:令和2年度の熱中症予防行動の留意点について

感染症のリスク、熱中症のリスクの両方を考慮すると、密閉された屋内や人との十分な距離が確保できない暑い場所へ行くことは避けたほうがよいでしょう。
そして当然のことですが、マスクを着用していないときには、それ以外の感染対策を十分におこなうことが大切です。
手洗い、咳エチケット(マスクを着用していないときはハンカチやティッシュで鼻と口を覆う)、ソーシャルディスタンスを保つことなどを徹底しましょう。

下記の記事で詳しく紹介しています。

参照:産業保健新聞「コロナウイルス拡大でマスクが品切れ!でも大丈夫、本当にとるべき正しい予防行動をお教えします!」

こまめに水分をとり、必要に応じて塩分も補給する

熱中症対策の基本となるのが、水分・塩分の補給です。
前述したとおり、マスクを着用していると普段よりも喉の渇きを自覚しづらくなりますので、喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給するようにしましょう。
食事以外で1日あたり1.2Lの水分摂取が一般的な目安となっています。

また、激しい運動、屋外での作業をしたときや、たくさん汗をかいたときには、塩分補給のために経口補水液やスポーツドリンクを飲むことがおすすめです。
コーヒーや紅茶などのカフェイン入り飲料、アルコール類は、利尿作用によってかえって脱水が進行してしまいますので、水分補給としての飲用は避けてください。

暑さ指数(WBGT値)を毎日チェックし、その日の行動を考える

暑さ指数とは、熱中症の発生リスクに特化した指標であり、人間の体の熱収支に影響を及ぼしやすい「湿度」「日射・輻射など周辺の熱環境」「気温」の3つで算出されます。
この暑さ指数をチェックし、熱中症リスクが高い日には普段以上に注意して、3つの密が避けられる場所ではマスクをはずす、暑い時間帯の外出を避ける、冷房のない場所での運動を避ける、普段以上に涼しい服装をしたり帽子や日傘を活用したりする、自宅やオフィスなどの屋内で冷房をつける、などの対策をおこなうことが必要です。
暑さ指数は測定器のほか、環境省の「熱中症予防情報サイト」からもご確認いただけます。

参考:環境省「熱中症予防情報サイト」

今の時期から体を暑さに慣れさせる

熱中症のリスクを上げる要因として、暑さに慣れていないことがあります。
本格的に暑くなる前に、少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。
環境省及び厚生労働省は「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で、毎日 30 分程度の運動を続けることで体が暑さに慣れると示しています。
ちょうど今の時期から、毎日ウォーキングやランニングなどの運動をおこなうとよいですね。
ただし水分補給をおこなうことと、無理をしないことはこころがけてください。

体温と体調のチェックを毎日おこなう

新型コロナウイルス対策のため体温測定と体調のチェックをおこなっている方が多いと思いますが、それが熱中症対策にも役立ちます。
熱中症の症状のひとつとして、体温が高くなることがありますし、体調が悪いときは普段よりも熱中症リスクが上がることが考えられます。
いずれの場合も、出勤を含む外出は控えたほうがよいでしょう。

私たちが「新しい生活様式」のなかで迎える初めての夏。
感染対策と同様に熱中症にも気を付けながら、健康に過ごしましょう。

<参考>
・環境省、厚生労働省「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について~「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』」における熱中症予防~」

ABOUT ME
【保健師】北原 梨英
大学を卒業後、保健師として活動するほか、健康経営エキスパートアドバイザーとしてさまざまな企業様の健康経営を支援してきました。現在はセミナーのご依頼が最も多く、得意とする女性の健康増進と活躍推進をはじめ、多くのテーマでお話をしております。「従業員に長く健康に働き続けてほしい」「健康経営に取り組みたい」「健康経営優良法人の認定を目指したい」などお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。どのようなご状況の企業様にも親身に寄り添って、今すぐできることからご提案し、一緒に取り組んでいくことをお約束いたします。 【保有資格】保健師、健康経営エキスパートアドバイザー、看護師、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士