みなさま、「日本人の食事摂取基準」は、ご存じでしょうか?
「1日で必要なビタミン」などといった表記を目にしたことはあると思います。
これらは適当に決められているものではなく、5年に1度改訂される「日本人の食事摂取基準」に基づいています。
そして、2019年12月24日、厚生労働省が2020年版の日本人の食事摂取基準について、報告書を公表しました!
2020年度から、新しい食事摂取基準が用いられます。
今のうちに、報告書にじっくりと目を通して、2020年度に備えましょう。
主な変更点は?
・ 高齢者の低栄養予防やフレイル予防のための基準を設定
(※「フレイル」…健常から要介護へ移行する中間の段階のこと。
フレイルの時期を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられています。)
・ 50歳以上については、より細かい年齢区分による摂取基準を設定
・ 「対象別特性」と「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」を各論に追加
・ 若いうちからの生活習慣病予防のための基準を設定
・ 目標量にエビデンスレベルを設定。
高齢者に対する内容の充実
高齢社会が進むことに備えて、高齢者向けの内容が増えている点が、今回の一番の改定ポイントではないでしょうか。
報告書では、たんぱく質摂取量の多さが、フレイルのリスク低下と関連するといった、いくつかの研究が紹介されています。
65歳以上のたんぱく質の目標量(下限)は、「食べものや食事全体のエネルギー量に対して、たんぱく質が何%を占めるかの割合(%エネルギー)」を、13%エネルギーから15%エネルギーに引き上げされています。
このように、生活習慣病予防だけでなく、フレイル予防も考慮し設定されていることがわかりますね。
また、50歳以上の年齢区分について、以下のように従来の2区分から3区分へ変更されました。
【従来】50~69歳/70歳以上
【今回】50~64歳/65~74歳/75歳以上
WHOや行政で用いられている高齢者(65歳以上)、後期高齢者(75歳以上)の区分に合わせた形になりましたね。
この整合性を合わせることで、使いやすくすることが目的のようです。
「対象別特性」と「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」
低血糖の状態は、悪夢を見やすくすると言われています。
低血糖な状態が続くと、血糖値を上げようとし、交感神経が興奮してしまうからです。
脳も身体も興奮した状態で眠ると、悪夢を見たり、筋肉のこわばりや歯ぎしりが起きて、 目が覚めた時の疲労感につながります。
夜間の低血糖を防ぐために、夕食を抜くことなく、糖質(ご飯やパン、たんぱく質や甘いもの等)を減らしましょう。
若いうちからの生活習慣病予防
食塩摂取量
食塩をとることで、高血圧やがんのリスクが高くなることは、みなさまご存じでしょう。
「減塩」を謳った商品も多く出ていますね。
これらが関係してか、日本人の食塩摂取量は、減少傾向にあるようです。
とはいえ、WHO のガイドラインでの推奨量である、5 g/日未満にはまだまだ程遠く、日本人のナトリウム摂取量(食塩相当量)の分布をみると、5 g/日という量は、5 パーセンタイル値に近く、5 g/日未満を満たしている人は、極めて稀だと推定されるそうです。
そのことから、現在のナトリウム摂取量(食塩相当量)の分布で、真ん中にある摂取量(中央値)と5 g/日の中間の量を、目標量とされました。
この結果、従来の目標量より、0.5 g/日引き下げられました。
理想は5 g/日未満だけど、現実を考えると難しいから7.5g/日(男性の場合)にしよう、ということですね。
また、国内外の様々なガイドラインを参考にすると、高血圧や慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量は、6 g/日未満が望ましいことが、新たに記載されました。
コレステロール
既に脂質異常症の人や、そのリスクが高い人については、リスクを軽くする必要があり、そのためにコレステロール摂取量の上限を定めることが必要と記載されました。
目標量にエビデンスレベルを設定
食事摂取基準は、可能な限り科学的な根拠に基づいて定められています。
これらの科学的根拠は、1つの研究結果よりも、複数の研究をさらに総合的に分析するメタアナリシスなどの方が、信頼度が高いとされています。
今回の食事摂取基準の中で、「目標量」に限り、どのレベルでの科学的根拠であるかをエビデンスレベルとして設定されています。
それぞれのエビデンスレベルと、各栄養素のエビデンスレベルがどのレベルにあるかは、以下の表に示されています。

詳しくは、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書を。
2020年度から使用される新しい基準は、今回の報告書を踏まえて、今年度中に公表予定とのことです。
報告書の詳細は、以下のページで確認しましょう。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
