【肝機能低下が気になる方】肝機能の検査結果ってどう見る?悪化の原因と対策を解説
講師:宮野友里加(管理栄養士)
健康診断で肝機能検査が引っかかってしまった!
お酒をあまり飲まないのに、 肝機能の検査でひっかかってしまった……
こんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、肝機能検査で数値が悪化した方向けに以下をご紹介します。
- 肝機能数値を改善するためのポイント4つ
- 基準値と異常値をレベル別に説明
この記事を読むと、生活改善の具体的なポイントと異常値の対応に関する知識が身につきます。
企業内の健康管理室等で約7年間、社員の健康相談や保健指導をおこなってきた産業保健師が詳しくまとめました。
ぜひ最後までご覧ください。


AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの異常値と基準値
まずは、肝機能の検査であるAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの異常値と基準値を見ていきます。
AST(GOT)、ALT(GPT)の異常値は30IU/l以上から
AST(GOT)、ALT(GPT)の基準値は29IU/l以下のため、30IU/l以上の数値だった方は以下の内容を参考にしてください。

γ-GTPの異常値は50IU/lから
γ-GTPの基準値は49IU/l以下のため、50IU/l以上だった方は以下の内容を参考にしてください。

肝機能の数値改善は「食事・運動・禁煙・節酒(禁酒)」がポイント
まず肝機能の数値の具体的な改善方法を見ていきます。
健診結果で数値が高く生活改善が必要と診断された方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
- 食事は「低カロリー、低脂肪、高タンパク」に見直す
- 肝臓について脂肪をとるには「有酸素運動」をおこなう
- 肝臓の負担を減らすために「禁煙」する
- アルコールは「節酒、禁酒」を心がける
それぞれのポイントについて詳しくみていきます。
食事のポイント
肝機能の数値が高い場合は、肝臓に脂肪がつかないような食事が基本となります。
つまり「低カロリー、低脂肪、高タンパク」の食事を心がけます。
その理由は、食事で摂取する糖質や脂肪は、肝臓で中性脂肪に合成されるため、食べすぎると中性脂肪が過剰に肝臓に溜まるためです。
中性脂肪が肝臓に溜まった状態を「脂肪肝」といいます。
「脂肪肝」になる1番の原因は、「脂肪分」の多い食品の摂りすぎです。
外食では脂肪分の多いメニューになりがちなので、メニューを選ぶ際は脂肪分の少ないあっさり系を選ぶといいですね。
では1日に摂る脂質量の目安はどれくらいがよいのでしょうか?
一般男性の1日の脂質量の目安は400kcal~500kcal、1食あたり150kcal程度とされます。
ラーメン、ハンバーガー、牛丼など平日のランチに食べやすいメニューの脂質量をみてみましょう。
■ラーメン
しょうゆラーメン 脂質量20.4g ⇒ 183.6kcal
とんこつラーメン 脂質量27.3g ⇒ 245.7kcal
チャーシューメン 脂質量26.9g ⇒ 242.1kcal
■ハンバーガー
てりやきバーガー 脂質量32.3g ⇒ 290.7 kcal
チキンカツサンド 脂質量25.9g ⇒ 233.1kcal
■牛丼
牛丼(並盛) 脂質量20.4g ⇒ 183.6kcal
このようにラーメン、ハンバーガー、牛丼ともに1食あたりの脂質の目安150kcalを上回っています。
麺類であればそばやうどん、ハンバーガーや牛丼はたまに食べる程度がおすすめです。
運動のポイント
肝臓についた脂肪をとるには「水泳、ウォーキング、ジョギング、エアロビクス、自転車」などの運動を自分のペースでおこなうのがおすすめです。
ただし激しい運動は肝臓に負担がかかるため控えます。 一時的に呼吸を止めておこなう無酸素運動も肝臓に負担をかけるだけで脂肪を燃焼させる効果はほとんどありません。
★運動のポイントは「細切れ
はじめから意気込んで運動をしようとすると、なかなか時間がとれず挫折してしまいます。
運動の効果は「10分を2回」でも「20分を1回」でも同じとされていますので、細切れに運動することからはじめてみるのはいかがでしょうか。
- 通勤電車を1駅手前で降りる
- お昼を少し遠くまで食べに行く
- 階段でオフィスまで行ってみる
- 電車やバスで座らず、お腹に力を入れて立つ
小さなことでも毎日継続すれば大きな差になります。
★歩き方のコツは「早足」
歩く時は下図を参考に早足を意識しましょう。
ゆっくり歩くと効果は半減しますので注意が必要です。

禁煙のポイント
たばこに含まれるニコチンやタールなどの有害成分は肝臓で分解されるため、肝臓に負担がかかります。
特にアセトアルデヒドという物質は肝臓を最も傷める毒性を持っているとされます。
アセトアルデヒドはアルコールを分解する際にも発生するので、飲酒しながらの喫煙はさらに体によくありませんね。
★禁煙で取り戻せる寿命
禁煙開始年齢より、「35歳でプラス10歳」「40歳でプラス9歳」「50歳でプラス6歳」「60歳でプラス3歳」の寿命が取り戻せるといわれています!
アルコールのポイント
お酒の量が多い方は節酒、禁酒をすることで数値の改善が期待できます。
★節酒の方法
① 1回量を減らす
お酒を飲む機会が多い人は、1回量を意識します。
グラスで運ばれてくるお酒を選んだり、比較的ゆっくり飲むワインを選んだりと、自分のペースで飲めるお酒を選ぶことがポイントです。 ビールや日本酒など、相手から注がれてしまうお酒は飲酒量を自分でコントロールしにくいお酒は控えます。
② お酒を飲まない日をつくる
習慣的な飲酒をしている人は、飲まない日を作ることで、トータルの飲酒量が確実に下がります。
「家では飲まない」、「〇曜日は飲まない」、「休日は飲まない」など、自分なりのルールを作るとよいですね。
★禁酒が必要な場合って?
肝臓の機能が低下していたり、「アルコール依存症」と呼ばれるくらいお酒の量が増えていたりする場合は、お酒を一切絶つ「禁酒」が必要です。
またアルコールと相性の悪い薬を内服する場合も禁酒をしますので主治医とご相談ください。

全体のまとめ
ここまで肝機能検査の数値改善方法と異常値についてご紹介しました。
生活改善のポイントは以下4つです。
- 食事は「低カロリー、低脂肪、高タンパク」に見直す
- 肝臓について脂肪をとるには「有酸素運動」をおこなう
- 肝臓の負担を減らすために「禁煙」する
- アルコールは「節酒、禁酒」を心がける
異常値についてはそのままにせず、生活改善や医療機関受診をおこなうことが大切です。
不安なことがあれば早めに医療機関を受診し医師に相談することをおすすめします。
この記事が少しでもお役に立てばうれしいです。
